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候補
ザワザワと賑わう大学の食堂。
「 はあ〜」
両手で頬杖をつき、俺は大きな大きな溜め息を吐き出していた。
「 おいおい...溜め息デカすぎだろ」
「 んーーー」
呆れた様に友人が声を掛けてきたが、俺はぐでんと机に突っ伏した。
クソデカ溜め息が出る程に悩んでいる事と言えば、あの事以外に無い。
「 セックスしてーーー」
「 そんな溜まってんなら風俗でも行けよ。それかデリしろ、デリ」
「 それじゃダメなんだよ〜」
「 めんどくせぇ奴だなー」
心底呆れた声で言われ、「自分でも分かってるよ〜」と言い返した。
俺がゲイである事は、一部の友人にはカミングアウトしてある。
警戒されるのは嫌だけど、隠して窮屈な生活を送る方が嫌だった。
「 何で店じゃダメなんだよ」
「 だって...店じゃ愛を感じられない!」
「 うわーー、めんどくせーー」
グッと拳を握った俺に、友人は呆れた声に死んだ目も付けて吐き捨ててくれた。
でも、そうじゃん?
知らない相手と体だけ満たされるセックスしたって、この寂しさは埋まらない。
俺は心も体も温かく満たされるセックスがしたいんだ!
「 そんなに愛あるセックスがしたいんなら、はよ彼氏作れ」
「 簡単に作れないから悩んでんだろ〜」
「 あ、俺は無理だから」
「 誰も頼んでねーよ」
最近、独りで慰めるのも悲しくなってきた。
自分がゲイだと自覚してから、早いもので10年くらいになる。
そして、自分が受け入れたい側だとハッキリ自覚したのは6年前。
そこから独りで何度か試すうちに、後ろじゃないと上手くイけなくなった。
悲しい事に、この世の中、そう簡単に同性の恋人は作れないらしい。
色々と拗らせて20歳を迎えた俺は、今、人肌が恋しくて仕方がない。
最近では特に酷く、その原因には思い当たる人物が居る。
「 もうアイツで良いじゃん」
「 アイツ?」
「 ほら、いつも絡んでくる奴」
「 ぁー...」
「 アイツならすぐに相手してくれそうじゃん。名前何だっけ?確か「三谷洸希でーす」そうそう。三谷...って本人じゃん」
「 うげっ、何しに来たんだよ」
「 うげって、酷いな〜。遥に会いに来たんだよ」
「 会いに来んで良いわ...」
三谷 洸希 。
ヘラリと甘い笑顔を撒き散らすこの男。
俺の体は、間違いなくコイツが原因でバランスを崩したんだ。
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