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候補

ザワザワと賑わう大学の食堂。 (成瀬 遥)はあ〜」 両手で頬杖をつき、俺は大きな大きな溜め息を吐き出していた。 (モブ友人)おいおい...溜め息デカすぎだろ」 (成瀬 遥)んーーー」 呆れた様に友人が声を掛けてきたが、俺はぐでんと机に突っ伏した。 クソデカ溜め息が出る程に悩んでいる事と言えば、あの事以外に無い。 (成瀬 遥)セックスしてーーー」 (モブ友人)そんな溜まってんなら風俗でも行けよ。それかデリしろ、デリ」 (成瀬 遥)それじゃダメなんだよ〜」 (モブ友人)めんどくせぇ奴だなー」 心底呆れた声で言われ、「自分でも分かってるよ〜」と言い返した。 俺がゲイである事は、一部の友人にはカミングアウトしてある。 警戒されるのは嫌だけど、隠して窮屈な生活を送る方が嫌だった。 (モブ友人)何で店じゃダメなんだよ」 (成瀬 遥)だって...店じゃ愛を感じられない!」 (モブ友人)うわーー、めんどくせーー」 グッと拳を握った俺に、友人は呆れた声に死んだ目も付けて吐き捨ててくれた。 でも、そうじゃん? 知らない相手と体だけ満たされるセックスしたって、この寂しさは埋まらない。 俺は心も体も温かく満たされるセックスがしたいんだ! (モブ友人)そんなに愛あるセックスがしたいんなら、はよ彼氏作れ」 (成瀬 遥)簡単に作れないから悩んでんだろ〜」 (モブ友人)あ、俺は無理だから」 (成瀬 遥)誰も頼んでねーよ」 最近、独りで慰めるのも悲しくなってきた。 自分がゲイだと自覚してから、早いもので10年くらいになる。 そして、自分が受け入れたい側だとハッキリ自覚したのは6年前。 そこから独りで何度か試すうちに、後ろじゃないと上手くイけなくなった。 悲しい事に、この世の中、そう簡単に同性の恋人は作れないらしい。 色々と拗らせて20歳を迎えた俺は、今、人肌が恋しくて仕方がない。 最近では特に酷く、その原因には思い当たる人物が居る。 (モブ友人)もうアイツで良いじゃん」 (成瀬 遥)アイツ?」 (モブ友人)ほら、いつも絡んでくる奴」 (成瀬 遥)ぁー...」 (モブ友人)アイツならすぐに相手してくれそうじゃん。名前何だっけ?確か「三谷洸希でーす」そうそう。三谷...って本人じゃん」 (成瀬 遥)うげっ、何しに来たんだよ」 (三谷 洸希)うげって、酷いな〜。遥に会いに来たんだよ」 (成瀬 遥)会いに来んで良いわ...」 三谷 洸希(みたに こうき)。 ヘラリと甘い笑顔を撒き散らすこの男。 俺の体は、間違いなくコイツが原因でバランスを崩したんだ。

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