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初デート
あの夜から一週間が経過。
毎日、俺と慶太くんはこまめに連絡を取り合っている。
そうして、土曜日。
今日は昼から慶太くんとデートだ。
記念すべき初デート。
レストランでランチを摂り、ショッピング?はたまた映画にするか、悩んだが、慶太くんは俺が行きたいところならなんでもいい、と言い、ただ、慶太くんは焼肉が食べたい、とのこと。
だったらレストランでなく、まず焼肉にするか、てことで。
待ち合わせのコンビニに行くと慶太くんの姿がない。
準備に時間がかかってるかな?と腕時計を眺めた。
不意に。
「隼也さん。こっち!」
はて、慶太くんの声。
何処だ?とキョロキョロ。
車のウィンドウから手を振っている慶太くんがいた。
が。まさかの外車。
しかも左ハンドルと来た。
「はい。隼也さん。乗って」
一旦、車を降りると助手席を開けてくれた。
「あ、ど、どーも...。て、これ慶太くんの車?親御さん?」
「んー?僕のだよ?」
運転席でハンドルを持つ慶太くんが...可愛いのに、なんだか様になっている。
俺も車はあるが日本車だ。
「僕の行きつけ、ていうか好きな焼肉屋に行こうか?予約入れてるんだ♡」
俺の行きつけに行こうとは考えていたが、予約まで入れてはない。
並んで入れるのは間違いない、と思ってのこと。
「まさか、予約まで入れてるなんて...」
「だって。隼也さんを並ばせて足を痛めたりさせたくないし」
う、わ...。
左ハンドルの車を優雅に運転し、なんという男前発言...。
着いた焼肉屋は...俺が行こうと思案していた店とは違う、高級店かつ超有名店。
1皿数千円。
「ヤバ。...お金、降ろして来ないと」
思わず、焦りからそう零すと、
「隼也さんは気にしないでいいよ。僕が行きたい、て言ったんだもん♡さ、行こうか」
再び駐車場で慶太くんは助手席側に周り、ドアを開けてくれた。
店の中まで完全エスコート。
....俺の今までのデートとはうんでんの差。
まるで姫じゃないか...?
「なに食べたい?なんでも好きなだけ頼んでいいよ。僕は運転だし、ノンアルにしよっ」
代わりに俺が運転、とは言えなかった。
うん千万するんじゃないか、て高級車なんて運転した事がない、しかも左ハンドル...。
「うん、ありがとう...」
そう言えば。
以前に寄っただけだが、慶太くんのマンション、外観凄かったっけ...親と一緒かと思ったけど。
「ううん。僕のマンション。分譲マンションだけど、そんな大したことないよ」
屈託なく肉を焼いてくれながらそう笑うけれど...。
「さ、焼けた」
腑抜けている正面に座る俺の皿に焼きたての肉を乗せてくれた。
「いただきます」
「うん。僕も。いただきます」
互いにノンアルのビールで乾杯した後、これまた高級感のある焼肉に舌鼓をうった。
「....美味すぎる」
「だよね。僕、焼肉、めっちゃ好きなんだ」
可愛らしく微笑む慶太くんはやっぱり美青年というよりもかなりな美少年だった。
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