11 / 11

11

「……んぅ、」 甘い雰囲気だったせいでも、抵抗できなかったからでもなく、ヨウがそんなことをしたのは俺が、それを望んだ表情を見せたからだろう。全然嫌だとは思わないし、もっとしてほしいとさえ思ってしまう。 ヨウは軽く噛みついたままで俺の上唇を引っ張り、名前を呼べばその声ごと食べてしまうように唇を合わせてきた。想像していた柔らかい唇に優しく甘いキス、ではないけれど、何度も激しく求められ息が上がる。 「ヨウ、……好き」 「英っ」 「どうしよう、俺……っ」 自然に零れた言葉に自分で驚いたけれど、それでもストンとハマったその想いは、この雰囲気に流されたからではないはず。甘えたくて、触れたくてたまらない。キスだけじゃあ足りない。 「ヨウ……」 少し上体を起こし、自ら口づける。ヨウは黙ったままだったけれど、キスをまた返してくれた。 「ヨウは、俺のことどう思う?」 「それは……」 「ねぇ、」 「……好きに、決まってるだろ、」 絞り出すようにそう伝えてくれたヨウの目には涙が浮かんでいて、ヨウの気持ちを聞けて嬉しかった反面、明日の朝に目覚めたとき、枕元の羽を見て「どうしてこんなものが?」と呟く自分が想像できた。ヨウはきっと、俺の記憶を消してしまうだろう。 「ヨウ、好き」 「……っ、」 「好きだよ」 「分かったから」 「何度だって言いたい。……言わせてよ」 「……馬鹿」 抱きしめたまま眠って、朝にはおはようのキスをして。俺のこの我が儘に、ヨウは頷いてくれなかった。俺はそれ以上何も言えなくて、消えてしまわないようにヨウに抱きついた。 「英……、おはよう」 「っ、」 「消せなかった」 「……馬鹿ヨウ」 次の日目が覚めると、ヨウは俺を抱きしめたままだった。絶対に消されると思っていたのに。 「お前が何度も寝言で俺を呼ぶから」 「ヨウ」 「お前に名前を呼ばれるのには弱いみたいだ」 「ヨウ!」 ぼろぼろと泣く俺にヨウは、そっとおはようのキスをしてくれた。 END

ともだちにシェアしよう!