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「……んぅ、」
甘い雰囲気だったせいでも、抵抗できなかったからでもなく、ヨウがそんなことをしたのは俺が、それを望んだ表情を見せたからだろう。全然嫌だとは思わないし、もっとしてほしいとさえ思ってしまう。
ヨウは軽く噛みついたままで俺の上唇を引っ張り、名前を呼べばその声ごと食べてしまうように唇を合わせてきた。想像していた柔らかい唇に優しく甘いキス、ではないけれど、何度も激しく求められ息が上がる。
「ヨウ、……好き」
「英っ」
「どうしよう、俺……っ」
自然に零れた言葉に自分で驚いたけれど、それでもストンとハマったその想いは、この雰囲気に流されたからではないはず。甘えたくて、触れたくてたまらない。キスだけじゃあ足りない。
「ヨウ……」
少し上体を起こし、自ら口づける。ヨウは黙ったままだったけれど、キスをまた返してくれた。
「ヨウは、俺のことどう思う?」
「それは……」
「ねぇ、」
「……好きに、決まってるだろ、」
絞り出すようにそう伝えてくれたヨウの目には涙が浮かんでいて、ヨウの気持ちを聞けて嬉しかった反面、明日の朝に目覚めたとき、枕元の羽を見て「どうしてこんなものが?」と呟く自分が想像できた。ヨウはきっと、俺の記憶を消してしまうだろう。
「ヨウ、好き」
「……っ、」
「好きだよ」
「分かったから」
「何度だって言いたい。……言わせてよ」
「……馬鹿」
抱きしめたまま眠って、朝にはおはようのキスをして。俺のこの我が儘に、ヨウは頷いてくれなかった。俺はそれ以上何も言えなくて、消えてしまわないようにヨウに抱きついた。
「英……、おはよう」
「っ、」
「消せなかった」
「……馬鹿ヨウ」
次の日目が覚めると、ヨウは俺を抱きしめたままだった。絶対に消されると思っていたのに。
「お前が何度も寝言で俺を呼ぶから」
「ヨウ」
「お前に名前を呼ばれるのには弱いみたいだ」
「ヨウ!」
ぼろぼろと泣く俺にヨウは、そっとおはようのキスをしてくれた。
END
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