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オメガとして生まれて
「歩、ちゃんとピル飲んだんだよな?」
「うん...」
兄が冷ややかな乾いた声色で問いた。
情事の後、ベッドの上で皺になったシーツに半裸を隠したまま声にならない声で答える。
5つ上の兄の達哉は僕を見ることもなくベッドから立ち、身なりを整えていた。
「一応、心配だからさ。アフターピル飲んどけよ。こないだ渡したろ」
「...わかった」
弟の僕は16歳とはいえ、160cmと少しと小柄で細く白く、情けない程、貧弱な体つき。
あどけない顔立ちで男らしさの欠片もない。
そんな僕は資産家の御曹司の約立たずなオメガでもある。
兄は180cmは軽くあり、体つきも男らしく僕のように色白でもなく、凛々しく万人受けするイケメン。
両親も格式のある家庭に男らしくもない、また、オメガの僕が生まれたことを好ましく思ってはいない。
兄もそうだ。
僕は努力してはいても成績はせいぜい中クラス、おまけに運動神経すらない。
兄はというと成績も運動神経も抜群で、クラスメイトや同級生だけでなく、全校生徒の人気者。
僕が兄に犯され続けていることはもちろん誰一人知らない。
兄と僕だけの秘密。
どうして僕はこんな格式のある家庭に生まれてしまったんだろう...
そして、どうしてオメガになんて生まれてしまったんだろう...。
兄は声をかけるでもなく衣服に身を通し、僕を振り返ることなく僕の部屋を後にした。
涙すらもう流れない。
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