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不可思議な感情
蝉の声が...煩い。ただそれだけだ。
なにも考えられない、なにも浮かばない、蝉の声しか...聞こえてこない。
「...あっ、あ」
僕はクラスメイトの部屋で体を重ねていた。
どうせ僕は兄から渡されているピルもある、抑制剤も、だから幾ら僕がオメガだとしても平気、だから。
子供はできない。
兄に抱かれなかった日はこうして穴埋めのように別の誰かに抱かれてる。
僕の微かなアルファを誘うオメガの香りは花の香りがする、そう言われる。
なんの...花なんだろう。大して興味はないけど。
「好きだ」
そう告白された。
「...付き合えないけど。抱いてくれる....?」
僕は困惑気味に背丈のある男子生徒を見上げる。
いつも。
僕は情けないくらい男らしさに欠けてて。
背丈もなくて。
だから上目遣いになってしまうらしい...。
大抵はみんな付き合うことを諦め、抱いてくれる。
僕は....おかしい。
兄に無理やり犯されていた、それなのに兄が僕を犯しながら僕の顔を見る、その瞳が....
怒りの中の寂しさのような孤独のような、何処か辛そうな、その瞳から僕は逃げられない。
いつから...だっただろう。
13のときは単に怖くて、それだけ、だったのに....。
会話すら、もう僕たちには、ないのに。
兄が僕を犯す、その瞳が僕は好きだ。
「イクッ....!」
中に....僕の中に。
生まれることができない可哀想な子供が...
その体液が流れ込み、僕の寂しさを埋めてくれた。
僕の中に寂しい孤独な子供が、その1人が一緒にいてくれる、そんな気がして。
僕は誰かにいつも抱かれて癒される。
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