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第20話 初めての客(10)

 2ー10 上書き  翌朝、俺は、カークの腕の中で目覚めた。カークは、すでに起きていて俺の寝顔を眺めていた。  俺は、顔が熱くなる。  「何?」  「いや」  カークは、その緑の瞳を蕩けさせて俺を見つめて微笑んだ。  「お前は、美しいな、ルシウス」  はい?  俺は、急にそんなことをいわれて動揺していた。  俺が美しい?  確かに、長い黒髪は、美しいとアンリにも言われたことがある。だが、それ以外は、大したことはないし。  よくある青い瞳に、貧弱な体。  俺は、美しくなんてない。  「俺なんかどうってことないし」  俺は、熱い顔を隠すようにカークの胸元に顔を埋めた。  「俺なんかよりカークの方がきれいだ」  「俺が?」  カークに俺は、こくんと頷いた。俺は、指先でつぅっとカークの分厚い胸板を撫でながら言った。  「こんな逞しい体をしてるし、剣だって剣聖とかいわれるぐらい強いし。ほんと、憧れちゃうよ」  「憧れ?」  カークが頬を赤らめる。  「もと勇者一行の大魔法使いにそんなことをいわれるなんて嬉しいな」  俺たちは、その日、昼過ぎまでベッドの中で抱き合って話した。  今回、カークが王都に戻ったのは領地で行っていた治水工事が一段落したからだった。  「このことを何より、お前に早く知らせたかったんだ」  カークは、ちゅっと俺の頬にキスした。  「お前の言う通りに川の流れを変えた。そして、川の両岸に堤防を作った。たぶん、これでもう水害は、起きないだろう。すべてお前のおかげだ、ルシウス」  それから3日3晩カークは、俺を離そうとはしなかった。  俺は、何度も何度もいかされて。  すっかりとろとろにとろかされた俺を見てカークは、満足げな笑みを浮かべた。  「これぐらいすれば他の客のこと、上書きできたかな?」  他の客?  俺がカーク以外の客をとってないことを正直に告げるとカークは、驚いていたが同時に嬉しそうだった。  「そうか。まだ、俺以外の男は知らないのか」  カークの笑みに俺は、なんだかくすぐったさを覚えていた。  こんなの。  まるで本当の恋人同士みたいじゃないか。  

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