49 / 90

第49話 過去と現在(9)

 5ー9 出会い  それからしばらくしてシャルが娼館にやってきた。  娼館にくるとは思えない荷物に俺は、苦笑していた。  図面やら書類やらをマジックバックから取り出したシャルは、俺に王都と辺境を繋ぐ街道の計画を説明し始めた。  「主な街道は、東西南北に向かって建設中だ。土魔法使いもヤーマン商会の協力のおかげで大勢集められたし、資金も商業ギルドから援助があるからね」  北方と東に広がる森を避けて街道は、建設される予定だとか。これで、馬車の事故も減ることだろう。  そして、シャルは、街道のところどころに警備兵の詰め所を作ることにしていた。それによって盗賊に旅人が襲われることが少しは、少なくなるだろう。  「いつか、街道を作りたいとは思っていたんだが、ルシウスのおかげで予定を早めることができたよ」  「俺の方こそ、すぐに動いてもらってありがとうございます、シャル」  俺は、シャルに訊ねた。  「それで運送業の創設についてはどうなっていますか?」  「そのことだが」  シャルが、俺を見てにっこりと笑った。  「もうすぐ、かたがつきそうだ」  ドアがノックされてルトが顔を出した。俺が出ていくとルトは、困った様子で告げた。  「その、ヤーマン様が来てるんだが」  マジか?  俺は、考えてから返事をした。  「すぐにお通ししてくれ」  「でも、今は」  「いいから」  俺は、ルトに微笑みかけた。ルトは、はぁっとため息をつくとヤーマン老を呼びにいった。  「はじめてお目にかかるかと思います。ヤーマン商会の会頭グラム・ヤーマンと申します」  ヤーマン老は、シャルに礼をとった。シャルは、慌ててヤーマン老に声をかけた。  「こちらこそはじめまして、この国で宰相を勤めております、シャーウッド・フォン・レイヤーです。どうか、お見知りおきを」  俺は、2人がテーブルについて街道やのこと、そして、運送業の創設について話し合っている側でお茶を入れていた。  ちなみに運送業というのは、商会などから請け負って荷物を運ぶ専門職のことだ。俺が2人に提案した。  

ともだちにシェアしよう!