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第49話 過去と現在(9)
5ー9 出会い
それからしばらくしてシャルが娼館にやってきた。
娼館にくるとは思えない荷物に俺は、苦笑していた。
図面やら書類やらをマジックバックから取り出したシャルは、俺に王都と辺境を繋ぐ街道の計画を説明し始めた。
「主な街道は、東西南北に向かって建設中だ。土魔法使いもヤーマン商会の協力のおかげで大勢集められたし、資金も商業ギルドから援助があるからね」
北方と東に広がる森を避けて街道は、建設される予定だとか。これで、馬車の事故も減ることだろう。
そして、シャルは、街道のところどころに警備兵の詰め所を作ることにしていた。それによって盗賊に旅人が襲われることが少しは、少なくなるだろう。
「いつか、街道を作りたいとは思っていたんだが、ルシウスのおかげで予定を早めることができたよ」
「俺の方こそ、すぐに動いてもらってありがとうございます、シャル」
俺は、シャルに訊ねた。
「それで運送業の創設についてはどうなっていますか?」
「そのことだが」
シャルが、俺を見てにっこりと笑った。
「もうすぐ、かたがつきそうだ」
ドアがノックされてルトが顔を出した。俺が出ていくとルトは、困った様子で告げた。
「その、ヤーマン様が来てるんだが」
マジか?
俺は、考えてから返事をした。
「すぐにお通ししてくれ」
「でも、今は」
「いいから」
俺は、ルトに微笑みかけた。ルトは、はぁっとため息をつくとヤーマン老を呼びにいった。
「はじめてお目にかかるかと思います。ヤーマン商会の会頭グラム・ヤーマンと申します」
ヤーマン老は、シャルに礼をとった。シャルは、慌ててヤーマン老に声をかけた。
「こちらこそはじめまして、この国で宰相を勤めております、シャーウッド・フォン・レイヤーです。どうか、お見知りおきを」
俺は、2人がテーブルについて街道やのこと、そして、運送業の創設について話し合っている側でお茶を入れていた。
ちなみに運送業というのは、商会などから請け負って荷物を運ぶ専門職のことだ。俺が2人に提案した。
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