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第57話 恋と愛と欲望と(7)

 6ー7 あまりにも俺たちは  「なぜ、だ?」  王太子殿下が俺に問いかけたので俺は、答えた。  「なぜ?あなたは、今夜、男娼を買いにこられたのでしょう?だから、俺は、あなたに快楽を与えて差し上げたのです」  「しかし!」  王太子殿下がかばっと起き上がり俺を抱き寄せた。  「こんなこと・・あなたにさせるつもりは」  「では、いったい何を求めておられるのですか?」  俺は、王太子殿下の体を押しやり彼の瞳を見つめた。その美しい金色の瞳は、涙に濡れていた。俺の胸がちくりと痛む。  「私は・・私は、決してこんなことをあなたにさせたかったわけではないんだ、ルシウス」  王太子殿下がぽろぽろと涙を溢して俺の腕を掴んだ。  「私は、本当にあなたを愛しているんだ」  「スミルナ殿下」  俺は、泣きじゃくる王太子殿下をそっと抱き締めた。  「あなたが愛してくださったルシウスは、もうどこにもおりません。今の俺は、体を売ることを生業として生きている男娼にすぎません」  俺は、王太子殿下の胸に頬を埋めて囁いた。  「汚れてしまった俺には、あなたの愛は相応しくない」  「ルシウス・・」  俺は、殿下と共に泣いていた。  俺たちは、二人抱き合ったまましばらく泣いた。  泣き止むと俺たちは、どちらからともなく体を離して見つめあった。そして、俺たちは、唇を綻ばす。  愛していたというには、あまりにも俺たちは、離れてしまったのだ。  それから。  俺たちは、裸のままベッドの上で抱き合っていろいろな話をした。  お互いに学園を卒業してからの話。俺が勇者一行から追放されてから義兄に騙されてここに売られてしまったこと。そして、殿下が次期国王としての重責に苦しんでいること。  「父上・・国王陛下が最近、食事もとられないのだ。だんだん、弱ってきておられて・・」  「国王陛下が?どこかお悪いのですか?」  表情を曇らせる王太子殿下の肩にもたれたまま俺は、彼に訊ねた。王太子殿下は、答えた。  「特にお悪いところはないらしいんだが・・何しろ食がまったくすすまなくって・・」    

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