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第66話 冒険者と男娼(6)

 7ー6 謝罪  誰かが俺の頬をぴしゃぴしゃと叩く感覚に俺は、ゆっくりと意識を取り戻した。  「気がついたか?ルシウス」  目の前にアンリの顔があった。俺は、痛む頭をすっきりさせようと軽く振った。  「ん・・」  唐突に俺は、クルーゼに抱かれたことを思い出した。俺は、アンリの胸元を掴むと顔を近づけてきいた。  「クルーゼ、は?」  「ああ、勇者様、か?」  アンリが俺に水を差し出したのを受けとって俺は、一口飲んだ。アンリは、俺が水を飲むのを見ながら答えた。  「勇者様なら別室で反省してもらっているよ」  反省?  俺は、思ったより喉が乾いていてコップの水を飲み干すとアンリに詰め寄った。  「まさか、騎士団に?」  「いや、まだ、うちの空き部屋に閉じ込めてるが。大人しいものだよ。お前が気をやって失神した後は、もう暴れもしないし」  「クルーゼをどうする気だ?」  アンリに俺が訊ねると真剣な顔で話した。  「これは、一つ間違えば大変なことになっていたかもしれないんだ。うやむやにすることはできない」  確かに。  クルーゼは、この娼館のルールを破った。しかも、怪しい薬を俺に飲ませたし。  でも。  「クルーゼに会わせてくれ!」  俺は、アンリに頼んだがアンリは、なかなかうんとは言わなかった。俺は、必死に頭を下げた。  「頼む・・お願いだから」  アンリは、俺の哀願にしぶしぶ頷いた。  ルトの監視下に置いて、俺は、クルーゼと部屋で会うことになった。  俺は、まだ身動きがとれなくて。裸の体にシーツを巻き付けてクッションを背に置いて腰かけていた。  クルーゼは、ルトに連れられてやってきた。  なんだかしょぼんとしているクルーゼに俺は、ちょっと驚いていた。  クルーゼは、いつだって俺様で。天上天下唯我独尊な奴なのに、すごく落ち込んでいるみたいで俺は、不覚にも気の毒になってしまった。  クルーゼは、ベッドから少し離れた椅子に座るようにルトに促されて腰かけると震える声で言った。  「すまなかった、ルシウス」  俺が黙っているとクルーゼは、声を大きくして話し始めた。  「俺、俺、お前がいなくなってから、なんか調子悪くってさ」

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