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第71話 王国の宝玉
8ー1 身請け?
俺が娼館『シャトウ』にきて4度目の冬がきた。
「お前、いくつになった?」
アンリが急に俺に訊ねた。
うん?
俺は、アンリに答えた。
「来年の春で24になるけど」
「そうか」
俺は、アンリの執務室に呼び出されていた。アンリは、ソファに腰かけた俺に微笑んだ。
「どうだ?そろそろ身請けを考えてみるか?」
はい?
俺は、それが嬉しいのかどうかもわからなくて。複雑な思いがしていた。
だって、一度男娼に堕ちた俺がどんな人生を歩めるっていうんだよ?
「幸いなことにお前には何人かの身請けを望んでいる客がいる。その中の誰かに身請けしてもらうつもりはないか?」
俺の頭の中は、一瞬でパニックになっていた。
俺の身請けを望んでいるのは、というと。
まずは、ヤーマン商会の会頭であるグラム・ヤーマン老。または、俺の前々世の伴侶であった邪神カルゼ。
そして、宰相であるシャーウッド・フォン・レイヤー伯爵。
最後にこの国の王太子殿下であるスミルナ・オル・ラ・エイダース殿下。
この3人ぐらいかな?
まあ、他にも謹慎が解けてから通ってきてる第2王子であるもと勇者のクルーゼ・オル・ラ・エイダースとかもいるわけだけどこいつは、俺が候補から外しているし。
だって、嫌だろ?
昔の友達に身請けされるなんて。
だいたい俺の身請けなんてもの大金持ちじゃないと無理だし。アンリがいくらぐらいふっかけるのか知らないが、一晩過ごすだけで金貨100枚だからな。ちょっと考えられない金額なんだろうな。
「なんで、そんなこと急に?」
俺がきくとアンリは、ふっと口許を緩めた。
「私の思いは、お前のおかげで叶えられた。お前を買ったもともとれてるし、そろそろお前を自由にしてやってもいいかと思ってな」
マジか。
アンリは、部屋に戻る俺に言った。
「まあ、急ぐことではないが、考えておいてくれ、ルシウス」
俺は、どうやって部屋まで戻ったのかよく覚えていない。
とにかくふらふらしながら部屋に戻ってきた俺をルトがソファに座らせてくれた。
「どうしたんだ?ルシウス」
「ああ・・」
俺は、ぼんやりしたままルトに答えた。
「俺、身請けされるのかもしれない」
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