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第77話 王国の宝玉(7)
8ー7 満たされなかった
ジニアス王は、俺に話し続けた。
「王子が物心ついた頃のことだ。後宮に賊が押し入り母は、殺された。そのときから俺は、復讐することだけを考えてきた」
俺は、頷きながらきいていた。ジニアス王は、声をつまらせる。
「父を殺し、王になった。それでも心は満たされなかった。俺は・・殺戮にとりつかれてしたのだ」
ジニアス王は、杯をとり落とした。
「止まれない。止まれば、今度は、俺が殺される。だから、俺は・・」
「もう、よいのではないですか?」
俺は、王が落とした杯を拾い差し出した。
「あなたは、充分苦しまれた」
「・・ルシウス・・」
ジニアス王の頬を涙が伝い落ちる。俺は、そっと王を抱き寄せた。
それから。
王は、俺を抱きながら泣いた。
俺は、ただ、王に抱かれた。
床入り前に俺を抱いた客は、これで2人目だ。
1人目は、クルーゼ。
そして、このジニアス王。
ジニアス王を俺は、柔らかく抱き止めた。
王は、手負いの獣のように俺を貪った。
王の熱いもので何度も貫かれて俺は、極めていた。
何度も、何度も。
俺は、王に引き裂かれ、喰らわれた。
溢れるほどにその精を注がれて。
俺は、いつしか意識を手放していた。
朝。
気だるい体をなんとか起こした俺は、絨毯の上で1人、黒いマントに包まれて眠っていた。その黒いマントは、ウィズのものだった。
俺は、頭をぶんぶんと振るとルトを呼んだ。
すぐに駆けつけたルトは、俺のよろける体を支えて立ち上がらせた。
「あの人は?」
俺が問うとルトが怒ったように答えた。
「あいつは」
その後、俺は、急いで身支度を整えるとアンリの執務室へと向かった。
アンリは、俺を待っていた様子で俺にソファをすすめるとお茶を入れてくれた。
「あいつ・・ウィズ、は?」
「彼なら急ぎの用ができたとかで王城に向かった」
俺は、アンリから受け取ったお茶のカップを両手で抱えて覗き込んだ。迷子の子供のような俺の顔が揺れていた。
「そうだ。あの使者殿からお前に言伝てだ」
アンリが俺に微笑んだ。
「今夜を楽しみにしている」
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