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第81話 されど愛しき日々

 9ー1 知らない男  ジニアス王国の王城の奥にある後宮の離宮に俺は、通された。後宮には、王の側室たちがいるらしく俺を彼女らと一緒に過ごさせるわけにはいかないからなのだろうと俺は、思っていた。  到着から数日たってもまだ、ジニアス王は、現れなかった。俺は、離宮の使用人に訊ねたのだが、みな、俺に答えてはくれなかった。  「なんか、嫌な感じだな」  ルトが俺にお茶をだしてくれながら不満げに呟く。  「あいつ、いつまでルシウスのことを放っておくつもりなんだ?」  「まあ、俺の扱いなんてこんなもんだろ」  俺は、お茶を飲むとほっと吐息をついた。実際、今、ジニアス王は、大変なのだろう。過去に自分たちがやったことの償いに追われているのだ。だから、俺など二の次なのに違いない。  だが、俺の考えは、甘かった。  それを思い知らされることになったのは、俺が後宮に入って1ヶ月ほどが過ぎた頃のことだった。  ある夜。  突然、数名の男たちが後宮の俺の部屋へと入ってきた。  俺もルトももう休んでいて。  驚いて飛び起きるとその男たちは、俺に告げた。  「国王陛下がお出でだ!」  はい?  俺は、男たちに命じられ彼らに渡された服に着替えた。だが、それは、服とは名ばかりのすけすけの薄絹で、ほとんど何もきてないのと同じだったので俺は、恥ずかしさに頬が熱くなる。  「こんな服を国王陛下が?」  ルトがきくと男たちは、下卑た笑いを浮かべた。  「国王陛下が下された服が不満なのか?」  憤るルトを俺は、制した。  それから男たちに連れられて俺は、離宮の地下へと向かった。というか、ここに地下なんてあったのか。俺は、暗い道を黙って男たちについていった。  男たちが俺を連れていった先は、地下牢のような場所で、牢に囲まれた広い場所には拷問器具が置かれていた。  マジか?  俺は、奥の牢に人がいることに気づいた。  その人物は、声を封じられ鎖に繋がれていた。暗くてよくはわからないが、男のようだ。  「よくきたな」  背後から声がして振り向くと若い金髪の男が立っていた。薄明かりに照らされた横顔がどことなくジニアス王に似ているような気がした。  「誰だ?」  俺がきくとすぐに俺を連れてきた男たちが俺を押さえ込んだ。  「王に対して無礼だぞ!」  はい?  俺は、床の上に押さえつけられながら男たちが王と呼ぶ男を見上げた。だが、それは、俺の知らない男だった。  

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