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第80話 王国の宝玉(10)

 8ー10 旅立ち  出発の数日前に俺を訪れたシャルに俺の義兄の話をきかされた。  なんでも俺をアンリに売った金で借金を返した義兄だったが、悪い習慣は治らずその後もギャンブルなどで身を持ち崩したらしい。  「実は、何度もお前のもとを訪れて借金をしようとしていたらしいんだが、その度、アンリ殿に追い払われていたようだ」  結局、家は、とり潰され、義兄一家は、借金奴隷として異国へ売られていったらしい。  うん。  俺と母を苦しめた連中は、もういないんだな、と思うとちょっと感慨深かった。  いよいよ、俺が王都を旅立つ日がきた。  王家の立派な黒塗りの馬車を3台も連ねて王都を出た俺たちは、護衛の騎士団の面々に守られてエイダース王国からジニアス王国へと向かった。  俺たちは、王都だけでなくいく先々で歓待を受けた。  いや。  俺、ただの男娼にすぎないんですけど。  ただの男娼が他国の王族に身請けされるだけなんだけど。  俺は、みなに見送られてちょっと恥ずかしかった。  俺には、そんな価値はない。  だが、ルトは、そんな俺の手を握って言った。  「あなたは、もうただの男娼なんかではない。あなたは、エイダース王国から嫁ぐんですから。顔をあげて、胸を張ってください」  そのルトの言葉に背中を押された。  エイダース王国からジニアス王国までは、馬車で3ヶ月の旅だった。  いくつかの国を通ったが、どこもジニアス王国からの侵略のため町は荒れていた。だが、ジニアス王国からの支援により復興がなされようとしていた。  季節は、もう夏になろうとしていた頃、俺たちは、ようやくジニアス王国へと到着した。  ジニアス王国は、山に囲まれた平原にあった。軍事国家とか言われるが本来は、豊かな農地が広がる穏やかな国のようだ。  俺たちは、街道を進んでいった。  1週間ほどでジニアス王国の王都フルキアに入った。  が、俺たちを出迎えたのは、ジニアス王国の騎士団だけだった。  「ご苦労でした」  それだけ言って俺たちを受け入れるとエイダース王国の連中を追い返すようにして見送った。  俺は、ジニアス王国からそんなに歓迎されてない?  しかし、後宮に通された俺をもっと驚くことが待っていた。  

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