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第23話 【R18】ちょっとでいいから
コーヒーショップを出た直桜に、護が駆け寄った。
「直桜、大丈夫でした……か?」
倒れ込むように護の肩に顔を埋める。
「直桜?」
顔を覗き込まれて、上目遣いに護を見上げた。
「色々話したいことがあるから、どこか二人きりになれる場所に行きたいんだけど……」
すぃと目を逸らして、また肩に顔をぐりぐりと押し付けた。
「ごめん、嘘。話しとか後でいい。二人きりになりたい。甘えたい。ちょっとだけでいいから」
護の腕が直桜の体を抱き締めた。
次の瞬間には手を繋いで早足で歩きだした。
「ま、護?」
「この辺り、あまり詳しくないので最初に見つけたホテルに入っていいですよね」
「え? うん……」
駅前だからなのか、少し歩くとすぐにホテルが見つかって、すんなり入室できた。
部屋に入るなり、護に抱きすくめられ、唇を塞がれた。
「ん……っ」
舌が容赦なく口内を犯す。久しぶりに深いキスをされて、頭が酸欠になりそうだった。口端から唾液が流れて、服を汚す。
力が抜けて、護の服を掴む手が震える。
「ぁ……まもっ……ふぁ」
一度、離れた唇がまた重なる。
伝わる体温が熱くて、溶けてしまいそうだった。
「直桜っ」
唇が離れると、強くきつく抱き締められた。
「とても心配でした。またあんなことになったら、私はきっと枉津楓を殺してしまう」
耳元で囁かれる声は悲壮に満ちて、聞いているこっちの方が辛い気持ちになってくる。
「もう、あんなことにはならないよ。護を悲しませたりしない」
体を離し、護の唇に触れるだけのキスをする。
部屋の中に入って、ベッドに寝転がる。護の胸に思い切り抱き付いた。
「こんな風にくっ付くの、久しぶりな気がする」
警察庁の地下十三階でも直桜と護は同じ部屋だ。しかし、くっ付いていると、それ以上のことをしたくなるので、なるべく控えていた。
遠慮なく甘えられるのは本当に久々だ。
(この前、護を怒らせちゃったときは、偶発的にエッチしたけど)
あんな風に護が吾を忘れて直桜を抱くことは、きっと滅多にないんだろうと思うと少しだけ残念な心持になる。
護の胸板にぴったりと顔をくっ付けて、息を吸い込む。護の匂いに満たされて、心に幸せが溢れてくる。
護の指が滑る皮膚が熱い。期待で強張る体に護の熱くて硬いモノが押し付けられる。
甘くて艶っぽい吐息を漏らして、護が直桜を見下ろした。
「直桜、抱いても、いいですか?」
余裕がない瞳が間近に迫る。
「そういうつもりで、誘ったけど」
顎を上げて、護の下唇を食む。
舌で掬い取られて、食うように舐め挙げられた。
上着を脱がされて、両手首に巻き付けられた。頭上に持ち挙げられて、やんわり押さえつけられる。
それだけで、股間が疼いた。
「小道具がないので、これで我慢してくださいね」
熱っぽい瞳が悪戯に笑む。
いつの間にか部屋に揃っていた手枷を思い出して、顔が熱くなった。
「そういうのなくても、すぐイっちゃいそうなんだけど」
護の舌先が、直桜の胸の突起の周囲をねっとりと舐める。直接触れられていないのに、びりびりと刺激を感じてしまう。
「今日は、私も長く持たなそうです」
護が自分の股間を直桜の股間にぐりぐりと押し付ける。
その刺激だけで達してしまいそうだ。
「でも折角だから、直桜を虐めて、いっぱい気持ちよくしてあげたいですね」
耳を舐め挙げながら、言葉と共に吐息が流れ込む。
ビクビクと体が震えてしまう。
「も、充分、焦らされて虐められてる。護、早く、触って」
股間を持ち挙げて、護の足に擦り付ける。
耳に舌を押し込んで、乳首を優しく撫でながら、護の足が直桜の股間を押し上げた。
「何処に触ってほしいですか? 後ろ? 前?」
触れるか触れないかの指が、直桜の熱く硬い股間をするりと撫でた。
「ふぁっ、や、やだ。服、脱ぎたい」
緩い快楽ばかりが中途半端に全身を支配して、涙目になる。
「いいですよ。腕、そのままにしていられたら、脱がせてあげます」
何度も頷くと、護の手がズボンのチャックにかかった。チャックが下がる刺激すら、腰に響く。
下着をずらすと、そそり立った男根が護の顔にはねた。
「ちゃんとそのままでいられて、良い子ですね。……もうこんなにして、舐めたらすぐ、イっちゃいそう」
指を滑らせるだけでビクビクと腰から震える。
「ダメ、触ったら、すぐ……。後ろ、ならし、てっ!」
護の舌が熱い男根の根元から先へと舐め挙げる。先を咥え込んで、チュクチュクとと吸われる。
「あ! ダメって、いった、のにっ!」
喉の奥まで咥え込まれて、腰が浮いた。
何度も出し入れされて、同時に根元を扱かれる。
「や、も……っ、イく、出ちゃうっ」
我慢する暇もなく腰が浮いて、護の口の中に精液を吹き出した。
ずるりとモノを口から抜いた護が、嬉しそうに直桜を見下ろす。
口の中に溜まった精液を手の上に吐き出した。
そのまま、直桜の後ろの口に馴染ませる。
「ローションがないので、ちょうどいいかなと。直桜は感じやすいから、溜まってるとすぐですね」
クチクチと卑猥な音が徐々に大きくなっていく。
呼吸を荒げる直桜を満足そうに眺めながら、護の指が後ろの口を開いていく。
「ん、ぁ……護、何で、うれしそう、なの?」
直桜を虐める護は、いつもより楽しそうに見える。
「だって、こんなにわかり易く直桜から誘ってくれたのは、初めてなので」
確かにそうかもしれない。
普段から、割と甘えるし誘いもするが、今日は今までとは違う。楓に会って、護に甘えたい気持ちが溢れた。護もそれを感じ取っているのかもしれない。
(護にしがみ付いて、繋がってたいって気持ち、伝わっちゃったのかな)
ちらりと護を窺う。
護の股間も、きつそうだ。足を延ばして、膨れ上がった男根を、服の上から足指で撫でる。
「そういうこと、出来る余裕があるんですか。いけませんね。本気で攻めないと」
二本だった指が三本に増える。
突然動きが速くなって、内側の感じるところを執拗に擦りながら叩く。
「ぁあ! ダメ、それ、そんなのっ……ぁ、ぁぁあ!」
下腹部に力が入る。
余裕のあった足は指を丸め込んで踏ん張るだけで精一杯になった。
「今日の直桜の蕩けた顔、いつもよりエロくて可愛い」
喘ぎ声しか零せなくなった口を唇で塞がれる。
シャツが絡まった腕を頭の下に固定されて、動けない。
その間も、もう片方の指は直桜の中を容赦なく攻め続ける。
「っ! んんっ、っん!」
快感が頭に抜けて、背筋にびりびりした気持ちよさが抜ける。
気が付いたら、腹の上が白濁塗れになっていた。
(何、これ、俺また、出したの……?)
気持ちが良くて、訳が分からなくなってきた。
シャツを脱いだ護が直桜の上に覆いかぶさる。
ズボンと下着をずらすと、ガチガチに硬くなった護の男根が顕わになった。
(見ただけで、硬くなってるの、わかる。早く、挿入《い》れてほし……)
無意識に腰を揺らす直桜を見て、護がニコリと笑んだ。
「もう、欲しい?」
耳元で問われて、頷く。
熱い先が、後ろの口を軽く突く。馴染ませるように上下に動く。
「ほしい、早く……、護ので、奥まで貫いて」
護の首筋に舌を這わせて、口付ける。
ちゅっと吸い上げると、護の体が小さく震えた。
「今日は悪戯っ子ですね、直桜。また、おねだり上手になりました?」
護が腰を低く前に突き出す。
「あぁ! 奥っ、あ、ぁぁ!」
一気に奥まで突っ込まれて、腰が浮き、震える。
護が直桜の体を抱き締めて、ぐりぐりと更に根元まで突っ込んだ。
「今日は私も余裕がないので、あんまり煽ると早く終わっちゃいますよ」
抱かれた拍子に浮いた腕を、護の首に回す。
ぎゅっと抱き締めて、護を引き寄せた。
「やっと繋がれた。一番近くに、護を感じる。好き……好きだよ、護」
護の肩に噛み付く。吸い付いて噛んで、また吸い上げる。
直桜を抱く護の腕が力を増した。
「やっぱり、直桜には、勝てないな……」
呟いた瞬間、護が腰を動かした。
最奥を強く何度も突かれて、声にならない声が上がる。
「まもっ、ぁ! ダメ! また、出る!」
「何度でも出して、何度でもイって、直桜。愛してる、直桜」
護の腰の動きが激しくなるたびに、快楽が増す。
良い所を擦られて、奥をぶち抜く勢いで突かれて、二つの強い快楽に体が抗えない。
護の体と自分の腹が擦れるたびに、ぐちゅぐちゅと音がする。
その場所が熱くて、イったんだとわかった。
中では何度、達しているかわからない。
喘ぎ声すらも出ているのかわからないくらいに、脳まで快楽に支配された。
「直桜、直桜、中に出しても、いい?」
激しい呼吸の合間に、護が問う。
答えがわかっていて毎回同じ質問をするのはきっと、護が直桜の許しを欲しているからだ。
「出……して、奥に、ほし……護の、ちょーだい」
くらくらする頭で、何とか返事する。
一際強く奥を攻められて、声すら出なかった。
ただひたすら護の背中に腕を回してしがみ付く。
直桜の肩に回った護の手が、強く力を込めた。
腹の奥に、熱いモノを感じた。
「ぁ、はぁ……はぁ……」
いつになく息を荒くして、護が直桜の上に倒れ込んだ。
呆然としながら、背中を汗でびっしょりにする護を抱き締める。
「直桜、大丈夫ですか?」
心配そうな護の顔が直桜を見下ろす。
「いつもよりイっていたし、途中から意識、飛んでました?」
「飛んでないけど、飛びそうになってた」
汗で張り付いた髪を避けながら、護の指が直桜の頬を優しく撫でる。
「護もいつもより気持ちよさそうだったね」
撫でる護の指を摑まえて、キスをする。
「それは、まぁ。今日はどうしても直桜を抱きたかったですから」
顔を逸らして恥ずかしそうにしている。楓と二人で会っていたのが、余程に心配だったのだろう。
「俺も、護に抱いてほしかったから。外に出られて良かったね」
ずっと地下に籠りっきりだったので、久々にご褒美でも貰った気分だ。
護の手が直桜の手を掴んで、引き起こした。
「シャワー、浴びてしまいましょうか。何があるか、わかりませんから」
「ん、そだね」
起き上がり、ベッドから立ち上がった護に続く。
その背中に傷を見付けて、思わず駆け寄った。
「護、ごめん。俺、また引っ搔いたみたい」
「え? ああ、構いませんよ。こういうのは、直桜が可愛い証拠ですから」
肩越しに笑みを向けられて、ドキリとする。
護は時々、やけに色っぽい表情をするから困る。本人はきっと自覚がないんだろう。
(誰にでもあんな表情、してないよな。してたら、困るんだけど)
じっと護を見詰める。
その視線に気が付いて、護が振り返った。
「もしかして、足りませんか?」
「え? 違う。そういうんじゃなくて」
「お風呂でも、ちょっとだけイチャイチャしましょうか?」
艶っぽい声で囁かれたら、嫌とは言えない。
「……する」
眼鏡を外して髪を乱した護が違う色気を振りまいている。
(こういうの、本当に困る。自分がイケメンだって自覚、あるのかな)
護の色香に翻弄されまくりながらも、期待に胸を膨らませて、直桜は風呂に向かった。
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