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08 レベル2へ参加①
響くんと出会ってショーに出場してから数ヶ月が経った頃、一通のメッセージが届いた。
【久しぶり、響です。レベル2のショーの開催日が決まったんだけど予定はどうかな】
そこには日時が書かれており、スケジュールを見たらしっかりと空いていたので、"空いてます"とだけ返すと、すぐに返信がきた。
【じゃあ参加するって先輩に連絡しとくね。会えるの楽しみにしてる】
あの時は恋人に振られ、普段そこまでガンガンに飲まない酒を飲んで気持ちも高まっていた事もあり話を進めたが、気持ちも体も落ち着いてしまった今、少しだけ憂鬱な気持ちになった。
するとコイツ、エスパーか?と思うタイミングでもう一通のメッセージが届いた。
【前はお酒も飲んでたから勢いで参加してくれたけど、本当に平気?】
当日、響くんに会えば少しは気持ちも変わるかもしれないし、お金も欲しい気持ちはあるので"平気"と送るとその日からショーが開催される日まで、響くんからの他愛ないメッセージが送られてきて、モチベーションを下げない様にするためのやりとりが続いた。
なんとか気持ちが変わらないままショー当日を迎え、俺は少し久しぶりに響くんと再会した。
「久しぶり」
「久しぶり!元気そうで良かった」
今日も相変わらずお洒落に決める響くんと合流すると、少しだけ前と同じ気持ちが蘇った。今回は指入れも含まれるとの事なので、数時間前に響くんと合流し、痛く無い様に解してもらう事になった。
ホテルへ到着してすぐにベッドへ寝かされた。今回は本当に解すだけなので俺が下だけ脱ぎ、響くんはしっかりと服を着ているので少々恥ずかしい。
明るく照らされる部屋で足を広げて一番見られたくない箇所を晒すと、素面なのもありかなり羞恥が襲った。
「…電気消したいんだけど」
「だーめ。今からもっと恥ずかしい事されちゃうんだから、俺で慣れておいてよ」
響くんに見られるからこそ恥ずかしいんだけど、と思いながらもローションでしっかりと湿らせた指が挿入されると、ぎゅっと体に力が入った。
「痛い?平気?」
「久しぶりだからキツイ。…キスして」
「キスはいいけどバカにしない?」
「しないよ。俺響くんの下手っぴなキス好きだし」
「バカにしてるじゃん」
少しムッとしながらも、前と同じ触れるだけのキスが贈られると体があったかくなった。
「…響くんのキス好き。可愛くて幸せ」
「練習して上手くなる。そしたらそんな風に言わせないからね」
「俺がパートナーの時は俺以外で練習すんなよ。…突然上手くなってたら何か嫌だ」
「…分かった。まぁキスする人なんて居ないし安心してよ。詩も俺とショーに出てる間は誰ともしないでね」
「うん」
恋人の束縛みたいなやりとりに学生時代のときめきを思い出しながら辿々しいキスを繰り返した。
何度かキスをしている内に体の強張りも解け、指を動かしても苦しさを感じない程になった。
「響くん」
「なーに」
「気持ち良い…今日このまま響くんとずっとのんびり過ごしたい」
「俺も。会場まで行くの面倒くさいね」
キスを繰り返した後、軽く会話をしながらもしっかりと解してくれた響くん。そのおかげでもう玩具でも響くんのでも問題なく入る程に解れたので指を抜き、下着とズボンをはいた。
「痛みとか出てない?少しでもしんどかったらすぐに言うんだよ」
何処までも気遣ってくれるのはただショーのパートナーだからだと思うが、ここまで優しくされた事がないのでつい勘違いしてしまいそうになる。
(今まで何人とも付き合ってきた俺がたった2回会っただけで落ちそうになるとは…この子、中々やるな)
パートナーに気を許していた方が感度も良くなるだろうし、優しくしてくれる理由はただそれだけ。変に勘違いしてまた一時的でもへこむのは嫌だし、しっかり割り切らないと。
二人共ホテルから出る準備を終えると、響くんは誰かに電話を始めた。
「理央先輩~準備終わりました~」
『了解。近くに居るからもう外で待ってろ』
「宜しくお願いします」
電話を終えると、響くんは俺を見て可愛く微笑んでくれた。
「今回は先輩が会場まで送ってくれる事になってるから。近くに居るみたいだし、もう待ってようね」
「はーい」
ホテルから出て数分待つと、そこに登場したのはこの前響くんのふざけた対応に怒っていたと思われる先輩。
聞こえてきた怒鳴り声しか知らなかったが、見た目は響くんと同じ様に一見とても真面目そうに見える。落ち着いた色のセットアップスタイルでキッチリとしており、顔はとてもイケメンだった。
「初めまして。理央です、この前は響が突然お誘いしたみたいで申し訳ない。改めてショーへ出場してくれてありがとうございます。今日も無理しない程度に頑張って下さいね」
話し方もかなり柔らかで、落ち着いた印象。響くんに怒鳴っていたとは想像出来ない様な優しい声色だった。
「あ、いえ…こちらこそ今日は送って下さるとの事で。宜しくお願いします」
あまりの格好良さに俺が見惚れていると、響くんに腕を引っ張られて後ろの座席へ誘導された。
「…詩ってああいう人がタイプなの?すごい目キラキラしてるけど」
「うん!俺イケメンが好きなんだよな。響くんの先輩すっごい格好良い」
「……そうだね。でも詩のパートナーは俺だから、ショーに出てる間は俺の事だけ見てなよ」
先輩には聞こえない程度にボソッと呟いた響くんは明らかに不機嫌になっており、ぎゅっと胸が苦しくなった。
(自分の見た目が可愛い事気にしてんのかな?…うわぁ、やば…ヤキモチ妬いてる様にしか見えなくてめちゃくちゃ可愛い~~……)
そんな事を思ってニヤけた顔で見ていると、恥ずかしそうにむっとしながら先輩から見えない様にキュッと手を繋いでくれた。
「じゃあ出発します」
「宜しくお願いします」
車が発進して暫くすると、どんどんと緊張感が襲ってきた。前は眠りこけていたので心の準備をする時間もなかったが、今は完全に素面。しかも指入れも増えるとなるときっと恥ずかしい箇所を晒す事になるだろう。
「前はお酒入ってたし、着くまで寝てたもんね。平気?あんまり緊張しない様に……って言いたいけど普通にするよね。今回も俺が全力でフォローするから安心してね」
さっきまで拗ねていたくせにすぐに大人っぽい優しい対応になる所もキュンとさせられた。繋いだ手に力を込めると、響くんも握り返してくれた。
「響くんが居るから頑張る」
「うん、俺も詩とだから頑張る」
「お前らラブラブかよ」
「「違います」」
「うわ、息ぴったり……」
「先輩、次からかったら殴りますよ」
「殴り返してやるよ」
二人の可愛らしいやりとりを見て緊張も少し解けた。手を握ったまま車に揺られる事数十分。前回と同じ会場へ到着した。
「先輩、送りありがとうございました」
「帰りは要る?」
「いや、帰りは詩と二人で何処か泊まるんで平気です。また結果だけ連絡しますね」
「了解。頑張れよ、響。じゃあ詩ちゃん、響の事宜しくね」
「あ、はい。ありがとうございました」
先輩は俺達を見送ると爽やかな笑顔で帰って行った。今から始まるショーよりも、今日一緒に何処かへ泊まると言ってくれた事に対してドキドキしながら、俺達は会場へ入って行った。
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