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07 響くんとホテル②
言われた通りいい子に待つ事にした俺はソファに腰掛け、ふと静かになった部屋で今日の事を振り返った。
本当なら元彼に激しく愛されていたはずなのに、全く知らない男の人と過ごす事になるなんて。
振られた事なんて些細な一コマだったかの様に、今日は刺激的なすごい一日だった。あのまま一人で帰っていたらまだ受け入れられなくて少しはへこんでいたかもしれない。
ぼんやりと考えていると響くんがバスローブ姿で浴室から出てきた。適度に熱った頬と色っぽい姿は、完全にネコのはずの俺が襲ってしまいたくなる程に可愛かった。
「お先。詩もゆっくり入っておいで」
「はーい」
今からこの人に抱かれるか抱くか分からないが、体を重ねるのが楽しみ過ぎて素早くシャワーを浴びに行った。
ドキドキしながら浴室を出ると俺の分のバスローブもバスタオルも準備してくれていたので、軽くドライヤーしてすぐにベッドへ向かった。
部屋へ戻ると照明が落とされてかなりムードが出ていた。ゴロンと寝転んでスマホをいじっている響くんはバスローブがはだけ、太腿がチラリと見えていて色っぽい。
初めて襲いたいという感情が出てきた事に戸惑いながらも近付くと、俺に気付いた響くんはスマホを置いてベッドへ座った。
「明るくない?もう少し暗くする事も出来るけど」
「俺は明るくてもいいよ」
「これ以上明るいと恥ずかしいからやだ」
(わぁ、処女みたいな反応するなぁこの子)
さっき不完全燃焼だった事もあり、小さな反応ひとつでムラムラして仕方ない。
「なぁ、俺どっち?」
「ネコなんじゃないの?俺攻める気満々なんだけど」
「響くん可愛過ぎて抱きたいと思ってしまいまして」
「ダメだよ。気持ち良くするからいい子に寝て?」
座ったままの響くんに抱きつくと優しく押し倒された。相変わらず恋人を見つめる様な柔らかい表情で見られると、つい勘違いしてしまいそうになる。
真っ暗ではないので響くんの顔がしっかり見えるのが余計緊張した。今まで付き合っていない人とこういう事なんてした事がなかったのでいけない事をしている様な感覚に陥った。
「今日最後までして欲しいんだけど響くんって男とこういう事するの抵抗ない?」
「詩なら寧ろ嬉しいよ」
「……じゃあ、お願い、します」
首に手を伸ばして見つめると、クスッと微笑んだ響くんに優しくキスされた。相変わらず触れるだけのキスしかしてくれないが、それでもとても興奮した。
俺は今からくる刺激に期待しながら、力を抜いて全て響くんに身を任せた。
◇ ◆
「めっっっちゃ気持ち良かったぁ…」
「それはどうも」
情事を終えた俺の言葉はそれに尽きた。あんなに辿々しいキスをしてくるとは思えない程にテクニシャンだった。
「俺、あんなに気持ち良かったの初めて。なのにキスと入れる時はちょっと辿々しくて面白かった。響くんすげー可愛い」
「褒めるだけにしてくれない?」
水を飲みながらむっとした顔で睨む表情も可愛くて、つい顔が綻んだ。
そんな響くんを暫く眺めた後、余韻に浸る様にベッドへ顔を埋めて今までの事をふと思い出した。
俺の好みのタイプは俺様系で引っ張っていってくれるイケメンな人だった。なので自己中心的な奴も多くて、あまり丁寧に抱かれた事はない。
そんな自分が、付き合っていない今日初めて出会った人に恋人の様に大切に抱かれた。
それが何故かとても嬉しくて、もっとこの人の事を知りたいと思った。
「なー響くん」
「ん?何、どうしたの」
「レベル2のショーの後、優勝してもしなくても、終わったら抱いてよ。すっごい気持ち良かったからさぁ」
一瞬、真剣なトーンでお願いしようかと思ったが、嫌な顔をされたらなんとなく立ち直れない気がして軽いノリでお願いをした。最悪、断られても冗談じゃーんって返せる様に。
「いいよ、今日みたいな感じで良ければ」
ニコッとした優しい笑顔に胸がキュンとした。
「えへへ、じゃあ楽しみにしてる。もっと響くんと仲良くなりたい。友達になってよ」
「いいよ。俺も詩と仲良くなりたい」
「……じゃあ、今度遊びに行こうよ」
「うん」
その場凌ぎの会話かもしれないが、少しでもこの人と一緒に居たい。手を伸ばして響くんのバスローブを掴むとそれに気付いた響くんは優しく手を重ねてくれた。
「俺シャワー浴びたら帰るね。詩は泊まってく?泊まるならお金置いて行くし、帰るなら家の近くまで送るよ」
「え、響くんはホテルに泊まんないの?」
「うん。疲れたからゆっくり寝たい」
「じゃあホテルで寝ればいいじゃん」
「自分の家のベッドでしかぐっすり寝れないんだよね」
「何それ可愛い…んじゃ、俺も帰る」
少し残念に思いながらも帰り支度を始めてホテルを後にすると、本当に家の近くまで送ってくれた。
「わざわざこっちまでありがとう。響くん可愛いんだから気を付けて帰ってね」
「心配どうも。今日は疲れただろうからゆっくり休むんだよ。家の中に入ったら連絡だけ入れといて。じゃあお休み。またショーの日時が分かったら連絡する」
ヒラヒラと手を振って帰って行った響くんの背中を見ながら、俺も自宅へと帰った。
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