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15 家でまったり過ごす時間②
ぼんやりと目を覚ますと、何やら体に違和感があった。昨日は確かショーの帰りに響くんの家に泊まって、同じベッドで寝たんだっけと振り返っていると、ふと髪の毛を梳かす様に頭を撫でられた。
そこで気付いたのは、響くんが抱き締めながら俺の頭を撫でてくれていたという事。
(こんな恋人っぽい事された事ない…!恥ずかしい!)
しかし寝ぼけて俺を抱き枕みたいに抱き締めてくれているのか、起きて自分の意思で抱き締めてくれているのか分からず混乱していると、頭上から響くんの声がした。
「…好きだよ、詩。可愛い、あったかい」
その言葉を聞いて一気に体温が上昇した。確かに聞こえた愛の言葉。今まで付き合ってきた相手には散々軽々しく囁いてきたが、こんな心の籠った声で言われた事なんてなかった。
「……っ」
今の言葉は聞かなかった事にした方がいいのか、今すぐに確認した方がいいのか判断出来ずに状態を変えずに居ると、響くんは俺から離れてシャワーを浴びに行った。
一人残されたベッドで俺は激しく高鳴って動く心臓を落ち着けようと深呼吸を繰り返した。
数分してシャワーを浴び終わった響くんが帰って来ると、パチっと目が合った。
「あ、おはよ。起こしちゃった?」
「ん、今起きた。おはよう響くん」
「今更だけど今日休み?結構寝ちゃったけど平気?」
「うん。休みだから平気。響くん今日の予定は?」
「俺も休み。さっき先輩に連絡したらレベル3で使える玩具持って来てくれるみたいだから、良かったらホテルで練習する?俺の家壁薄いからあんまり集中出来ないから」
「ん、行きたい」
「おっけ。玩具がいけたとしてもレベル3+は嫌だから普通の3でもいい?詩が辛そうな時に止めたりしてあげれないの嫌だからさ」
「あ、うん。平気。普通の3でいいよ。仮に3優勝したら次3+は出れるの?」
「出れないんだよね。だから次優勝したらおしまいだよ。…ちょっとお腹空いたから先輩来るまでにご飯食べようかと思うんだけど、朝はご飯派?パン派?」
「今はあんまりお腹空いてないかも」
「そっか。じゃあ俺パンだけ食べてくる。ホットコーヒー飲むけど要る?ブラックしかないけど」
「いらない、ありがと」
「はぁい」
俺がベッドでゴロゴロしている中、手際良くパンをトーストしてホットコーヒーを入れてムシャムシャと食べている姿は何だかとても可愛かった。
「…可愛い」
「何急に。詩には格好良いって言われたい」
「…それは多分言う時はこないかな」
「……あっそ」
今日は朝から素の響くんを見れて幸せを感じていると、ピンポンとチャイムが鳴った。
「あ、先輩かも。ちょっと待っててね」
「うん」
響くんは玄関の方へ向かい、来てくれた先輩と少し会話をしていた。俺は寝起きなのもあり、顔を見せることなくベッドに寝転んで待っていると、数分経って響くんが戻ってきた。
「見て、いっぱい貰った」
箱に入った新品の玩具をベッドの上に置いた響くんは目を輝かせていた。
「玩具好きなの?めっちゃ嬉しそうじゃん」
「いや、そんな事ないよ。ただ詩の事気持ち良くしてあげれるかなって想像したら楽しみで」
ベッドに置かれた玩具を手に取って確認してみると、ローターやバイブ等、昔に使われたものが沢山用意されていた。
それを見て少しだけ喉が鳴り、体が期待する様にあたたかくなった。
「…楽しみ。俺シャワー浴びたらすぐ行けるけど、もうホテル行く?」
「うん。俺も行ける。ゆっくり浴びておいで」
「はーい」
軽くシャワーを浴びて準備を終えると、早速近くのホテルへ行く事になった。折角だし刺激的にしたい!と言う俺の要望を伝えると、ベッドに拘束具が備え付けられているホテルを発見したのでそこへ向かう事にした。
今日も隣を歩く響くんはとてもお洒落で、可愛らしい。夕方から夜に会う事が多かったのでこんなに明るい時間に響くんを見るのは新鮮だった。日光に照らされる響くんは、とても格好良く見えた。
「…何か明るい時に詩の事見るの新鮮。キラキラしてて可愛く見える」
「…俺も今同じ事思ってた」
「本当?…嬉しい」
同じ歩幅で歩きながら電車で移動すると、デートみたいでドキドキした。いつもなら何も考えずに俺が喋る事が多いのだが、響くんが相手の時はやけに緊張してしまい、移動中も静かな時間が多かった。
緊張はするが、無言な時間も嫌な気持ちにならず、寧ろ心地良いと思えた。
「着いた。ここだって」
電車を乗り継いで到着したホテルはいかにもラブホテルという外観で、中も煌びやかに光っていた。早速目的の部屋のパネルを押して部屋へ向かった。
「何か昼間からホテル緊張する」
「俺も。昨日の疲れもあるだろうから無理しないでね」
「全然平気!響くんに優しくいじめられたい。いじめられたかったら先にいじめてあげるから言って!」
「俺はいじめられたくないからお気遣いなく」
冷たく返された辺りで目的の部屋へ到着した。中は普通のラブホテルの見た目だが、ベッドにはちゃんと拘束具が備え付けられていた。
目を輝かせてベッドへ向かい、早速服を脱ごうとすると、響くんに名前を呼ばれた。
「ん?」
「俺が脱がせたい」
「は?何で?やだよ…」
「…脱がせたい」
優しく手を掴まれると、そのままベッドに押し倒された。突然の男モードの表情にドキッと胸が煩く動き出した。
「…な、に…っ」
押し倒してくる姿はやけに男らしくて、ここへ来るまでの表情とは違い妙に緊張してしまった。
「…」
響くんはそれ以上何も言う事なく、ゆっくりと丁寧に俺の服を脱がせ始めた。
全裸を見せていたし、おそらくレベル1の時も脱がしてくれたんだろうが、素面の状態で、尚且つ少し気になっている相手だと恥ずかしくて仕方ない。
「…は、恥ずかしい!自分で脱ぐ…っから、」
「いい子にしてて」
低い声で囁かれると何も言い返す事が出来ず、俺は顔を真っ赤にしながらも素直に服を脱がせてもらった。
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