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第13話
それから数日が経った。晴明の話しを聞いていると本当に出雲はバーレインに通っているらしい。友達と一緒に通うこともあれば、一人で来る時もあるらしい。同居して以降バーレインには通ってないが、晴明が言っているなら本当の事なのだろう。
友達になりたいからならいいが、出雲のことだからそれだけじゃないだろう。実際自分に送られてくるラインにはけん制の意味を込めた内容が見え隠れしている。もしかしたら、自分が晴明のこと好きだとバレているのかと焦っているがいつも通りの返信を返しているから問題はないだろうと自分で言い聞かせる日々。
出雲の相手にだんだんと疲れてきたので昼はどこかに出かけようと決めた。晴明が作ってくれたご飯を食べた後仕事もほどほどに外に出かけた。晴明と一緒に出かけることが多かったから、1人で散歩は新鮮な気持ちになる。今まで気づかなかったがレトロな喫茶店を発見し、休憩がてら入ろうとする。ちょうどお茶時ということもあり、満席に近く相席でもいいかと言われ、それでも構わないと返事をすれば案内された。
案内された席には焦げ茶色の髪をツーブローに穏やかそうだが眼力がある目、スーツのことからサラリーマンだと分かる。見た目は整っており、自分と同年代と考えられる。自分に気づいたのかこちらに視線を向けて軽くお辞儀をする。こちらもお辞儀をし、向かい側の席に座る。すると気さくな人なのか話しかけてきた。
「ここの喫茶店にはよく来るのですが、初めて見る方ですよね」
「あっ、そうです。散歩をしていたら見つけて。いい喫茶店ですよね」
「分かります。職場が近いのでよく休憩とかで使わせていただいているんですよ」
そこから会話が弾んでいった。彼は雪宮 春という。医療器具関連の営業をしているらしい。雨霧はだからこんなにも社交的なのかと納得をした。雪宮の話す内容はとても面白く、普段は聞くだけの雨霧でもつい話したくなるのだから営業の成績はいいものだと推測できる。アイスコーヒーも美味しく、有意義な時間を過ごせた。雪宮が営業の時間となり、楽しい会話は終わりを告げることになる。
「そろそろ行かなくては。今日はとても楽しかったです」
「こちらこそとても楽しかったです。ありがとうございました」
「もし良ければライン交換しませんか?」
「いいですよ。交換しましょう」
話が弾む人は貴重だ。ここへ来たら彼とまた話すことができるかもだが、確定ではない。ラインで先に連絡すれば、話す機会も増えることだろう。できれば友達になれたらなという気持ちが雨霧にはあった。
「では、これにて。また会いましょう」
「また会いましょうね」
立ち去っていく雪宮に雨霧は軽く手を振って見送った。今日の出来事を晴明に伝えたいなと思いながら、残りのアイスコーヒーを飲み干した。
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