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第15話
熱い抱擁の後の晩ご飯は、どこかぎこちないものだった。お互い何を話せばいいのか、雅也は那央の料理を片っ端から美味しいと褒めた。そして、食卓の醤油に伸ばした手が那央の手とぶつかり、あっと顔を見合わせると、遂に噴き出してしまった。
「なんか、俺ら、高校生のカップルみたいだな」
「もう、雅也さん、急によそよそしくなるんだから」
「ごめん…なんか照れるよな」
那央もへへっとはにかんだ。
雅也はいつもの様に布団の上で左腕を伸ばして那央が頭をのせるのを待った。那央が雅也の腕枕で横になると手をしっかりと握った。
「ねぇ、雅也さん。いつも俺のおでこにキスしてくれてるでしょ?」
「…えっ?気付いてたの?」
「いつも気付いてるわけじゃないけど…キスしてくれたら、あぁ、雅也さんもう寝るんだなってわかった」
「俺の方が先に寝てたんだ…ごめん不安じゃなかった?」
「ううん…ぜんぜん。雅也さんの寝息に合わせて、吸ったり吐いたりしてるとね、いつの間にか俺も寝てるんだよね」
「それじゃ、おまじないの効果があるのかないのか、わからんな…」
雅也は腕枕の左腕を曲げて那央の頭を優しく撫でた。
「ねぇ、何のおまじない?」
「那央が朝まで安心してぐっすり眠れますようにってね」
那央は顔を少し上げて、雅也を見た。
「雅也さん…そのおまじない、今日からこっちにしてほしいな」
那央は雅也の唇にそっと自分の唇を重ねた。那央が唇を離そうとすると、雅也は左腕で那央の頭を押さえてそれを阻んだ。那央の唇の感触を確かめるように何度も唇を噛んだ。そして雅也の舌が那央の柔らかい舌に触れると、雅也は歯止めがきかなくなった。繋いでいた手を解き、那央の両頬を挟むと舌を絡めて、強く吸いついた。
雅也はキスをしたまま、那央のTシャツの裾を持つと、引き上げて脱がした。体勢を上下入れ替えると雅也もTシャツを脱いで、那央に覆い被さった。
「那央…ずっと前からこうしたかったんだ」
「あぁ…雅也さん…俺も」
雅也は那央の首筋に舌を這わせた。白くて滑やかな肌を手のひらで何度も愛撫をして、乳首をつまんだ。
「あっ…あぁ…あん」
雅也は那央の乳首をつまみながら、もう片方の乳輪をたっぷり舐め、その乳首を吸おうとした。
「あっ…ああ…ああああっ!!」
那央の喘ぎ声が明らかに変わった。雅也は発作かと思い、那央の顔を見た。
「那央…どうした?大丈夫か」
雅也はやり過ぎたかと後悔したが、那央の顔は苦しんでいるようではなかった。
「…たってる」
「…えっ⁈」
「勃ってるんだよ…俺の」
那央は起き上がって布団の上に胡座をかくように座ると、尻を左右交互に浮かして半パンとトランクスを膝近くまで脱いだ。
ふわふわした下生えの中から芽吹いたように、那央のペニスが下腹にひっつくように勃っていた。
「…ねっ?」
那央はまるで宝物を見せるような子供っぽい顔を雅也に見せた。雅也は何て声をかけようか迷ったが、指先で那央の頬に触れて、うん、とだけ言った。数秒見つめあった後
「ねぇ…触ってもいい?」
今度は那央が、うん、と言った。
雅也は那央を寝かせると、優しく握った。そしてゆっくりと手を動かした。
「…あっ…あぁ」
眉根を寄せて感じている那央が愛おしくてたまらなかった。奈落の底に堕ちないように繋いだこの手で、今は昇天させようとしている。雅也は那央の可愛い顔を凝視めた。
「ああん…じっと見られたら恥ずかしい」
那央は見つめる雅也に気付いた。
「さっき、一緒にちんこ見てたのに…恥ずかしいの?」
雅也は手を止めなかった。
「…あぁ…あん…もう、雅也さん…意地悪…だ」
「好きだよ…那央」
「あぁ…俺も、雅也さんが…大好き」
あぁ、どうか、どうか今夜が、とびきり素敵な長い夜になりますように、雅也は願った。
おわり
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