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第8話

 翌朝、ルークの心は浮ついていた。今日がマテオと友達になれるかという運命の日だからだ。  これまで色んな会話をしてきたが、あの日以降ルークはマテオに友達になってとも、なってくれるのとも聞かなかった。怖かったのだ。自分達は監視役と奴隷の立ち位置で、マテオにはメリットがない。ルークが出来るのは、ただ一つ。祈るだけであった。  真っ白な作業部屋は今日も変わらない。マテオが話しかけるまで、ルークは目の前の魔石を割っていった。そして、その時が来た。 「六百九。貴方の名前を教えてください」 「名前……?」 「はい、私達が付けている番号ではなく、貴方の名前です」 「ボクの名前はルークです」 「では、ルーク。友達になる前に一つだけ条件をつけさせてください」 「はい、なんでしょうか」 「この部屋だけでいいです。お互いに思ったことは嘘をつかないです。それが守れるならば、友達になりましょう」  マテオの条件にルークは春風を感じた。ルークの人生は冬しかなかったけれど、確かに春だったのだ。目頭が熱くなるのをグッと我慢するように、乱暴に目元を拭けば真っすぐにマテオの方を見る。 「うん! これからよろしくねマテオ!」 「はい、よろしくお願いしますルーク」  二人だけの秘密の友達は、未だ自分の輝きを知らない魔石しか分からない。高くなっていくであろう空は、青く澄んでいた。

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