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第7話

 二人の会話は止まることを知らなかった。まるで昔から関わりがあったかのように語ることをやめない。  しかし、時間とは残酷なものであった。約束の時間が近づくたびに、マテオの心に焦りが襲う。ルークとは気が合うと思っている。できるならば、友達になりたい気持ちもある。でも、言えずにいた。 「どうしましょう」  ついに六日目の夜となり、明日には答えなくてはならなくなった。未だマテオの中では決めかねておりソファーに座り、しかめっ面をしていた。友になりたい気持ちと、あまりにも違う立場。現実に苛まれていると、扉を叩く音がする。 「マテオ少しいいか」 「ジョルドお兄様。どうぞ」  扉を叩いた男はマテオと同じ黒く短髪で、黄緑色の優しそうな目をした男性が入ってきた。マテオは彼を自分が座っていたソファーに案内をし、机のある水と、母から貰った蜂蜜のクッキーをジョルドの前に置いた。 「どうしたのですか。ジョルドお兄様が部屋に来るなんて珍しい」 「仕事をし始めただろ。体調とか大丈夫かなと様子を見に来たのと、最近悩んでいそうだからな。話が聞けるならば聞こうと思ってな」 「えっ?」 「気付いてなかったのか。最近の食事も上の空で、会話に頷きもしないから母上も心配していたんだぞ」 「それは申し訳ないです」 「いや、マテオの年は悩みが多い時期だからな。気にするな」  周りからは無表情で分かりにくいと言われのだが、家族には悩み事はバレバレなようだと知り、マテオは恥ずかしさを覚えたが、これはチャンスなのではとも思った。深くは言わなくても、自分とは違い友達が多くいる兄ならば、ヒントを貰えるかもしれない。マテオは真っすぐにジョルドの顔を見た。 「あの、友達について悩みがありまして」 「ほう! マテオに友達の悩みを言われるとは。どんな悩みだ?」 「えっと、友達になりたいと言われました。でも、その子と友達になるには色んな障害があります。それでも自分はなりたい気持ちはある場合、ジョルドお兄様はどうしますか?」 「そんなのなるの一択だな」 「どうしてですか?」  ジョルドの即答に近い返事に、マテオは軽く口を開けて呆気に取られていた。ジョルドは何ともなさそうに、クッキーを一口食べる。 「だってなりたいんだろ? じゃあ、自分の気持ちに従うべきだ。障害とかはどうにだって出来ることが多い。だけど、一度切れた縁を再度結びなおすのは難しい。まっ、何事も自分の気持ちに従うことだな」  ジョルドの言葉に気付いたように、マテオは息を飲んだ。そんなマテオを見て、ジョルドは頭を撫でる。 「マテオは優しいから相手のことを思うと、立ち止まる癖があるよな。それはいいことだが、自分の気持ちも大事にな」 「……ありがとうございます」 「いいってことよ。じゃ、おやすみマテオ。夜更かしはするなよ」 「おやすみなさいジョルドお兄様」  マテオの悩みが解決したならばと、ソファーから立ち上がりジョルドは部屋から出ていった。一人になったマテオは静かに自分の気持ちと向き合った。ルークとどうなりたいのか。閉ざされた瞼から現れた青い瞳には、迷いがなくなっていた。

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