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第11話 幸福と愛情

「着いたー!」 「疲れたー体いてぇぇ」 京都駅に着いて、体を伸ばしつつ第一声をあげた。目の前には京都タワーが建っていて周りには外国人観光客が多い。さすが世界文化遺産登録をされてる市だなと思う。 荷物を先にホテルに預けて目的地まで行く。 まず最初に向かうのは清水寺だ。 世界遺産に登録されている、京都を代表する観光名所「清水寺(きよみずでら)」。音羽山中腹の三重塔、清水の舞台で知られる本堂、奥の院などが、壮大な伽藍を形作っている。崖の上に造られた舞台を支える柱には、釘が1本も使われていないというから驚きである。 その清水の舞台から望む京都市街の絶景は必見だ。それだけでなく、春の桜、初夏の新緑、秋の紅葉と、1年を通して多くの観光客を魅了する美しい風景が広がるらしい。 「うわぁ…すご…」 そこには初夏の新緑、建物を照らす青空が広がっていた。 「本当、ここからの景色すごいなぁ…」 写真をパシャリと撮る音が聞こえて、自分も撮ろうと思いスマホに景色を映す。緑と青と景色が映えてキラキラと眩しく写る。 「なぁ、せっかくだし一緒に撮るか」 「そうだな」 清水寺から見える背景を背にしてスマホの画面に収まるように身を寄せて撮る。何気にツーショットは初めてだったしずっと一緒にいるけどやってないことがあって少し新鮮さを覚える。 「…修也さん?俺の頭の後ろに2が見えるんだけど」 「えー?久孝さんの気のせいじゃない?」 「そんなわけあるか…ってなんで増えるんだよ」 「ごめん、指が勝手に動いた」 「動かしてるのは自分だろうよ」 いつものおふざけが始まったが旅行という非日常にテンションが上がるのは分かるから全力で乗っかった。 それからは、清水寺近くのお店で昼を食べてスイーツが美味しい店で食べたりした。お寺めぐりをしたり、京都タワーに登り京都市街を高い所から見るのは圧巻で特に夜景は景色が綺麗で最高だった。 ◇◇◇ 「あ〜〜!疲れた〜〜!布団サイコー…」 「足パンパンだー…歩けね〜」 ホテルに着いてから真っ先に布団に飛び込み体が布団に沈む。 適度に休憩は取っていたとはいえ旅行というのは疲れる。 「久、先に風呂入っていいよ」 「え〜〜〜、先に修也入っていいよ…寝てから風呂入る…」 布団に顔を埋めるように項垂れていると耳に唇が寄せられた気配がした。 「じゃあ一緒に入る?」 「!!」 ガバッと起きて修也の顔を見るとニヤニヤ笑ってた。そんな顔さえカッコいいからなんだが悔しい。 そして心地の良い声が耳にこびりついて離れない。 「ひ、1人で入るから!」 「そうなの?疲れてるなら風呂場まで連れて行ってあげようかと思ったけど」 「だ、大丈夫だし!風呂行ってくる!」 「りょーかい」 未だに笑っている修也にムカつきながら俺はバスルームの扉を閉めた。 あのまま連れて行ってもらったら絶対一緒に入るだけでは済まないと思う。修也との旅行は初めてで浮かれまくってるのは俺も同じで一緒に住んではいるけれどやっぱり特別というか新鮮味があって楽しいし旅行に来て良かったなと思う。 互いに入浴を済ましてテレビを見たりスマホを見たりと各自好きなことをやっていると修也がふと思い立ったかのように部屋の窓を開けて夜景を見ていた。 「夜景ほんと綺麗だな」 「そうだよな、京都タワーから見た時すげぇ綺麗だった」 「な、昼は昼でいい景色見れそう」 少し風が吹いてそよそよと髪が揺れる。シャンプーの匂いが仄かに香り鼻腔をくすぐる。 そういえば何で京都なんだろう。 ふと思う。行きたい理由は人それぞれだけどやっぱり気になる。だけど何でだろう。心当たりがあるのだ。でもこれは流石に自惚れすぎか? 意を決して修也に聞いてみる。 「…修也、今更なんだけど京都に来た理由って」 「…久、中学の修学旅行行けなかったじゃん?その時いつか京都行きたいって言ったの覚えてる?」 「!お、覚えてる…それ、修也覚えてたの?」 「うん、いつか行けたらなって」 『いいなー、京都』 『じゃあ、いつか行こうぜ』 『あぁ』 確かに中学時代にこんな感じの会話をした覚えがある。 何年も前の話を修也は覚えていてくれてそれを行動に移してくれるのがとても嬉しくて、心から修也のことを好きになれて本当に良かったと思う。 「あのさ、最近バイトのシフト増やしたって言ってたのってこのため…?」 「…うん、久と旅行行きたくてシフト増やした…本当は高校の頃に行きたかったけど、金も無かったしさ…時間かかったけど久と来れて良かった!」 バイトから帰ってくるたびにいつもより疲れたような顔をしていたのを思い出す。 心配もしたけど何か理由があるのだろうと深く追求しないでおいたけどまさか旅行に行くためだったとは思いもしなかった。 夜風に髪がサラリと靡いて嬉しそうに笑う顔に心がキュッと締め付けられるほど高鳴る。 「なんで…そんなに優しいの…」 「俺は久と旅行に行きたいって思ってたし、それに恋人の願いは叶えたいんだよ」 「イケメンかよー」 「久にそう思われてるならめっちゃ嬉しいわー」 照れ隠しのように軽口を言いつつ徐々に顔が熱くなるのを感じて下を向いた。 修也の左手が俺の髪を撫でて、身体が両腕に包まれて温もりに触れる。 いつもの修也の匂いに安心して目を閉じて自分も腕を回す。 しばらく抱き合っていたが修也から腕を離して声をかけられた。 「ちょっと目閉じてくれない?」 「…?分かった」 目を閉じていると首のあたりにほんの少しの違和感。 「開けて良いよ」 目を開けて首元を見るとネックレスがあった。 綺麗な緑と紫の石が並んだネックレス。修也も同じものを着けているようだ。 「俺も久も、普段アクセサリー着けないけど、その…形に残したくて…」 修也にしては珍しく、頬が赤く染まって照れているのか新鮮に映る。 「ありがとう…すげー嬉しい、大事にする」 なんだか今日はプレゼントだらけな一日だ。 月明かりで石がキラリと光り反射する。ずっと見つめていたいと思いながらネックレスを手に取った。 「久…」 優しい触れるだけの甘いキスをされ互いに身を寄せてぎゅっとハグをした。 ◇◇◇ 「…あっ、ん…!」 修也の手の中で達して、肩で息をするように呼吸を整える。 いつもより早くイってしまい恥ずかしさを感じていた。いつもと違う部屋、ベッド。そして旅行という非日常を過ごしていることから来てるのかもしれない。 「…いつもより早いね」 「恥ずいから言わないでいいよ…」 やっぱり修也も気づいていた。 悟られるのが妙に居た堪れなくて思わず固まる。 「興奮してる?」 「わ、わかんない!」 「俺はしてるよ」 手を引き寄せられて自身を触ると勃ち上がっていた。 「ね?」 「!」 困り笑顔で言うと腹筋に沿って流れる汗が目に入ってそれを追う。 「久が可愛くてこうなってんの、分かって?」 そしてその手を取ってチュ。とわざと音を立てるように左手に口付けを落とした。 「わ、分かったから…」 満足そうに笑うと、入れていいか聞かれて俺は頷いた。 「あっ…!」 「…ッ!」 中が一気に熱くなって、これだけでもイってしまいそうになる。 「あっ、あっ、あっ!」 突かれるたびに声が漏れて手で口元を隠した。 「久孝」 急に口を耳元に寄せて名前を呼ばれ、下からグジュグジュとやらしい音が聞こえる中で修也の声が鮮明に聞こえる。 「愛してる」 「…ッ!あっ!!…耳ダメっ」 声でイってしまいそうになって全身がビクリと震えた。 「ダメなの?」 「へんになる…っ!」 「…じゃあ、もっと変になっていいよっ」 「ー…ッッ!!」 奥に奥に突かれて息ができなくなるほどに快感が溢れてくる。目がチカチカして意識が飛びかけた。 「ひ、ぁあ…!!っん、や、ぁ!」 「きもちーね」 耳にキスを落として、後ろを舐めると甘い声が漏れた。本当に自分のものだろうかと疑うほどに。 「あっ、ん、あぁ…!も、もぅダメッッ…!」 「…ーッイこうか」 「んっ、ふ、しゅぅ、っあぁあ…!!」 「っ!!」 はぁ、はぁと息を整えて、強い快楽で飛んでしまいそうな中、唇に合わせるだけのキスをされる。 「修也…」 「ん?」 「愛してる」 「俺も」 互いのネックレスが音を立てる程密着して深く、深く口づけて愛を重ねる。 「…なんか、ネックレスいいな」 「お、そんな気に入った?」 「うん、ネックレス同士が合わさると音が鳴って修也が居るんだなって分かる…」 「…もう一回しない??」 「え?!どこでスイッチ入った!?しかもまた大きくなってるし…!」 「いや、そんなこと言われたらヤるしかないだろ」 「え、でも明日も観光するし今日はここで終わりで…」 「久が可愛いこと言うからだろ?あ〜、ほんと可愛いな…」 ちゅ、ちゅ、と額や頬、瞼などに啄むようなキスが降ってくる。 もう、ダメだ。こうなってしまったら止められない。 明日の自分頑張れ。と心の中で自分に託したのだった。 修也には内緒だが、寺めぐりをしている最中お参りで修也とずっと一緒にいられますようにと願ったのは秘密にしておきたい。言ったら叶わなくなりそうだから。

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