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20 初めてのヒート(※微)

それから、俺の体に異変が起きたのは数分後だった。 手の甲へのキスで異様にドキドキしている心臓がぜんぜん落ち着かない。 あれ?これ、不整脈?病気? と、不安に思っていると、さらに大きくドクンと全身が脈打った。 それと同時に全身から汗が吹き出る。 暑い。 ジャケットを脱ごうとして肌が擦れた瞬間、「んあっっ!?」と声を漏らしてその場に蹲った。 変だ。 肌が擦れただけで、全身を快感が駆け抜けた。 これ…、もしかしてヒートってやつか!? 気づくと同時に俺のそこはスラックスを押し上げていた。 こんなふうに痛いくらい立ち上がったのは初めてだ。 これが、ヒート‥、怖いっ こんなのが1週間近く続くと聞いた。 無理だ。耐えられるわけがない。 全身の熱さとむず痒さを抱えたまま、 蹲っているとどこかから恋しい匂いがしてくる。 誘われるように香りの元へ向かう。 と、そこはクローゼットのようで 開けると、頼嗣様の着替えが入っていた。 おそらく、泊まる時に着るための部屋着や 帰るための普段着だ。 隣には俺の服もかけてある。 もちろん、死ぬほど魅力的な香りを放つ 頼嗣様の服の方を物色する。 肌触りの良さそうな、自宅でよく見かけるカーディガンを手に取る。 普段の冷静な俺なら、頼嗣様の服を勝手に持ち出して、あまつさえ匂いを嗅ぎながら自分を慰めるなんて、絶対にしない。 不敬にもほどがある。 が、ヒートというのは恐ろしいもので… そんな常識さえもドロドロに溶かす。 その場で、思わずその服を思いっきり吸った。 全身が求めていた香りが鼻腔をつき、あろうことか俺は香りだけで吐精してしまった。 一度出てしまったからか、 「やばい、衣装を汚してしまったかもしれない」 と冷静になった。 が、それは一瞬で、また体が熱くなる。 早く、脱がなきゃ。 派手な装飾がついた、この日のために作られた衣装を丁寧に脱ぎたいのに 早く早くと急いてしまって 罪悪感を覚えつつも床に落とす。 その衣擦れだけで、俺の体は快感に震える。 ようやく全て脱ぎ終えたが、 下着はあえなくビショビショ。 スラックスはうっすら湿っていた。 これは洗わなきゃダメかも… 普段ならすぐに染み抜きをする。 が、俺はそんな余裕はなく、 衣装を床に脱ぎ捨てたまま 頼嗣様のカーディガンとともに ふかふかのベッドへ飛び込んだ。 滅多に自慰などしない俺は 正しいやり方も分からないけれど とにかく疼くところを刺激する。 が、余計にもどかしくなるばかりで 喘ぎとよだれ、我慢汁を垂れ流しながら のたうち回る。 早く、頼嗣様に帰ってきて欲しいのに こんな姿を見たら嫌われてしまいそうで 見られるのが嫌だ。 どれくらいそうしていただろう。 果てしなく長い時間だった気がする。 ガチャリとドアが開く音がした。 自分の後孔に、指を突っ込んで踠いている俺は気づかなかった。

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