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新しい出会い2

 金曜の夜。  仕事終わりにあきママの店に顔を出す。  出会系アプリなんかもあるけど、ネットで出会うというのはなんだか怖いから古典的だけどナンパがいいかなと思ったからだ。 「やっと出会い求める気になったのね」 「うん。立樹から卒業しなきゃなって思って」 「そうね。ノンケってだけでも実らないのに、結婚までしちゃったらもう終わりじゃない」 「うん。友だちにも言われた。数年後に子供がいてもおかしくないんだって思ったらさ、もう無理じゃん。想像するだけで嫌だよ」 「子供のいる男のことなんて愛せる?」 「わかんないけど無理かな。だからさ、いい人いたら紹介してよ」 「紹介する前にあんたなら声かけられるからいいでしょ」 「俺、そんなにモテないよ」  あきママに他の人を探すと言ったら賛成された。  そうだよな。俺がママの立場でもそうする。  ただひとつ、俺がモテると思ってるのが困る。紹介して欲しかったのに。  立樹もあきママも誤解してる。俺のどこをどう見たらモテるって思えるんだ?   「ひとつ言っておくけど、私と話してばかりいると声かけられる率低くなるわよ」 「えー。そしたら誰と話すの」 「大人なんだし1人で呑みなさい」 「1人でしっぽりとお酒呑むような歳じゃないし、キャラでもないよ」 「そうね。それはそうだわ」 「うん。だから紹介してね。変な人はやめてよ」 「まったく。注文ばかりして。注文するなら酒のおかわり注文してよ」 「するする。えっと……なににしようかな」 「私が決めてあげる」 「俺が呑めるのにしてね。ウイスキーとか苦手だよ」 「ジンなら大丈夫でしょ」 「うん」  そう言って出てきたのは紫色をした綺麗なカクテルだった。   「ブルームーンよ。ジンにバイオレットリキュールとレモンジュースを混ぜてあるの。カクテル言葉は叶わぬ恋と奇跡の予感、よ。今のあんたにぴったりでしょ」  カクテル言葉って聞いたことはあるけど、なにがどんな言葉なのか全然知らなかった。  奇跡の予感はわからないけど、叶わぬ恋というのは確かに今の俺にぴったりだ。  結婚したノンケの男を思ってるって不毛だもんな。  そう思いながらグラスに口をつける。 「あ、美味しい」 「でしょう。いい恋が来るわよ」 「そうだといいなー」  今度はきちんとゲイの男を好きになろう。  この店、この街で出会えば間違いなく相手はゲイだ。  実際に立樹と出会う前に付き合った彼氏はここで出会っている。  立樹だけだ。ノンケの男は。  その立樹とはこの街じゃない普通の店で出会ってる。  だから、ここで出会えばいいんだ。  そう思うと少し気が楽になる。 「いい出会いが来ると思ってれば来るわよ。信じてなさい」 「ママが紹介してくれたら大丈夫じゃん?」 「人を当てにしないの。自分で探しなさい」 「だからー。俺、そんなにモテるとは思わないけど」 「でも、ここで声かけられたりってあるでしょう」 「まぁ、あるけどさー」 「神様がいい出会いを授けてくれるわよ」 「神様かー」 「そしたらあの彼以上の素敵な人が声をかけてくれるのよ」  あ、夢見る夢子さんモード入った。  あきママは夢見る夢子さんだったりして、ちょっと笑っちゃうけど可愛いところがある。  きっとママの今の頭の中にはハーレクインのような出会いをしている場面があるんだろう。  そんなママを見ていると、隣から声をかけられた。 「1人なら一緒に呑みませんか?」  声をかけてきたのは、スーツを着た真面目そうな男だった。

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