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忘れられない4
港の景色を楽しんだ後はフランス山を降りていき、昼食は中華街で飲茶に舌鼓を打った。
いつでも来れる距離ではあるけれど、どうしても普段は足を延ばすことがないので存分に楽しむ。
本格的中華はここならではだ。
そして、午後はウインドーショッピングをする。
特に欲しいものがあるわけではないので、店を冷やかして歩くだけだ。
お店のものだってチェーン店だからいつもと違うものがあるわけではない。
それでも、なんだか違って感じるのだから場所のパワーはすごい。
楽しんではいる。実際、楽しいし。でも、この後付き合えないと、別れて下さいと言わなければと思うと少し気が重いのも確かだった。
なにもなく、楽しめたらと思う。
それこそ立樹と来たら、さぞ楽しいだろう。
立樹と今日のデートコースを辿ったらどれほどだろう。
ほら、こうやって立樹のことを考えてしまうんだ。
どこにいたって、なにをしてしても、誰といても考えるのは立樹のことだけだ。
そう思うと重症だな、と思う。
いつのまにこんなに好きになっていたんだろう。
きっと会うごとに好きになっていた。
特になにをしたわけでもない。ただ、会っては呑んでいただけだ。それでも、立樹と過ごす時間はとても楽しいものだった。
そしてどんどん想いが膨らんでいったんだろう。
「悠くん、どうしたの?」
「え?」
「なにか気になることでもあった?」
「あ、いや……なんでもないです」
「そう?」
まさか、別れ話をするから色々考えてるとは言えない。
別れ話は別れ際にするから、それまでは楽しもう。
「もしかして疲れた? どこかでお茶でもしようか」
そう言って近くのカフェに入る。
人気スポットの週末ということでカフェは混雑していた。
それでもなんとか入ることができ、席に案内される。
周りは友だちなのだろう女の子のグループかカップルばかりだ。
いや、俺たちもカップルと言えばカップルだけど、端から見たらただの友だちに見えるだろう。
ゲイのカップルだと考える人はそうそういない。
席について省吾さんはホットを俺はアイスオレを頼む。
今日は結構歩いているから少し暑い。
「今日は朝から結構歩いたから疲れたかな?」
「かもしれないです」
「中華街からここまでも結構歩いたものね」
「はい」
「疲れたりしたら言ってね」
「ありがとうございます」
ほらね。優しいんだ。いい人なんだ。なのに。なのに好きになれそうもない、ってなんでだろうって思う。
彼氏に最適だろうって。
もし友だちが省吾さんと付き合うって言ったら俺は手放しで勧めるだろう。
なのに、こと自分になったらダメっておかしいだろう。
「夜はなにを食べたい? 良さげなイタリアンのお店がここにあるみたいだけど」
「あ、パスタ食べたいです」
「じゃあ決まりね。早いけど、もう少しお店みたら行こうか。悠くんも疲れてると思うから」
「気を使わせてごめんなさい。でも、省吾さんが見たいところとかあったら行きましょう」
「大丈夫だよ。ここにしかないわけでもないしね」
この人はほんとに俺優先だ。申し訳なくなるくらいに。
それなのに俺はこの後別れ話をしようとしているんだ。
帰りに観覧車に乗ろうと言っているからそこで話そうと思っている。
帰りは途中までは一緒だけど、まさか駅のホームや電車の中で別れ話をするわけにはいかない。
だから話すタイミングと言ったら食事のときか観覧車しかないんだ。
だけど、食事の最中にそんな話しをしたらせっかくの食事が台無しになってしまう。だから観覧車を選んだ。
この笑顔を曇らせてしまう、と思うけれどずるずると引きずっていいことはない。
好きになれない以上いつかは言わなきゃいけないことなのだから。
だから。だから今日話すんだ。
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