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甘いデート3

 映画が終わった後は、カフェで映画の感想を言いあい、その後はウィンドウショッピングをしながら夕食の時間までを過ごし、創作料理の店で夕食を食べた後は、夜景の綺麗なホテルのバーに来た。  今日の2つ目のメインだ。  ホテルの上階にあるそのバーは全ての席が窓を向いている。  ふんわりとしたソファが座り心地良くて、しかも目の前には綺麗な夜景で、しかも隣の席との間隔が結構あいてるから心身ともにゆったりできる。  繁華街でありながらオフィスビルもそこそこある街だからか、ネオンのないところは見当たらないくらい明るい。  下を歩いているときは人も車も多くて嫌になるけれど、上から見るとそんな車のライトが流れていて綺麗に見えるとは思わなかった。 「結構綺麗だろ?」 「綺麗! 車が多いの嫌になってたけど、その車がいい光になってるなんて思いもしなかった」 「そんなもんだよな。俺も初めて来たときはそう思った」  初めて来たときは……。  きっとそのときは可愛い彼女と一緒に来たんだろう。  そしてそれは1回ではないかもしれない。  そんな立樹が今俺とデートをしてくれているというのが不思議だった。だって立樹はノンケだから。そんなイケメンノンケの立樹が俺を好きになってくれたのが夢のようだ。 「どうした?」 「え?」 「なにか考えてなかった?」 「あぁ、うん。こうやってデートしてるのが夢みたいだな、って思ってた」 「夢じゃないよ」 「うん」 「言ったことは嘘じゃないから」  言ったことって、好きって言ってくれたことだよね? もうそのことが夢のようなんだけど。 「なんで立樹みたいなイケメンがそう言ってくれたんだろ。綺麗な女の人も可愛い人もいっぱいいるし、綺麗な男だっていっぱいいるのに。なんで俺なんかをって思う」 「ほんと悠は自覚ないよな。可愛いって言ったことあるだろ」 「あ、なんか言われたかもしれない」 「ほんとなぁ」  立樹は長いため息をつく。え、そんなため息をつく? 「少しは自覚してくれ」 「だって……」 「だって、じゃないよ。ほんとに。可愛いから執着されて襲われたんだろうし。襲われたの忘れた?」 「まさか。覚えてるよ。痛かったもん」 「あれって、フラれたけど執着してたってことだろ」 「そっか。でも、たまたま好きになってくれただけでしょ。そんなに可愛いって思われるタイプとは思えないけど」 「ほんとに無自覚だな。どうやったら自覚を持ってくれるのか。とにかく、今デートしてるのは夢じゃないから」 「わかった」  無自覚っていうことはないんだけどなと思うけれど、今は美味しいお酒と綺麗な夜景を楽しみたい。 「あの元カレとはこういうところ来なかったの?」 「夜景の綺麗なところは連れて行って貰ったけど、こういう夜景の綺麗なバーはなかったな」  ただの夜景の綺麗ところもいいけど、こんなにがっつりと綺麗な夜景を見ながら呑むって最高かもしれない。 「立樹はよく知ってるね、こんないいとこ」 「ああ。会社の同僚に聞いたから」 「あ、職場近いもんね。でも、デートでよく来た?」  しょっちゅう来たよって言われたらどうしよう。いや、どうしようもなにも、結婚してたんだから元奥さんと来てたとかあるだろうし、それ以外の彼女だって来てるかもしれない。

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