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甘いデート4
「それさ、自虐だろ」
「だって……」
「一緒に来たのは1人。元奥さんと数回」
「あ、そんなもんなんだ」
「あのなぁ。俺、誠実なお付き合いしてたの。そんなにたくさんとっていうことはないよ。大体、ここの存在知ったの一年ちょっと前なんだから」
「そっか。そうなんだ」
「過去がないとは言わない。結婚してたのは悠も知ってるわけだし。でもさ、そんなに乱れた付き合いはしたことないし、それになにより今は悠が好きだから。それだけはしっかり覚えておいて。悠のこと可愛いと思って付き合ってるの」
好きだからとはっきりと言われて恥ずかしくなって下を向いてしまった。なんで立樹は普通に言えるんだ? しかも可愛いとかさ。
「あのさ、恥ずかしくない? 聞いてて恥ずかしくなっちゃった」
「別に。ほんとのことだから。それにはっきり言っておかないと夢とか馬鹿なこと言うからな」
言われちゃった。だって、ほんとに立樹とこんなデートをしてるっていうのが夢みたいなんだ。ノンケの立樹が振り向いてくれるなんて0%だと思ってたから。
どんな奇跡が起こったんだろうって思っても仕方ないだろう。そういえば、キスされたこと何回かある。
「ね、立樹。前にさ何回かキスされたことあるけど、それって……」
「好きだからだよ」
「え? だって結婚する随分前からだよ」
「その頃から好きだった。でも覚悟がなかったんだ。だから唯奈と結婚した」
「そうだよね。普通は男と付き合うなんてって思うよね」
「偏見はなかったけど、いざ自分がってなるとな。でも、悠が襲われたとき怖くなったんだ。もし通りかからなかったら死んでたかもしれないって。唯奈を失うより悠を失う方が怖かったんだよ」
そういえばあのとき、泣いていたように見えたのは、ほんとに泣いてたのかもしれない。
でも、それで奥さんと離婚して、俺的には夢を見てるみたいだけど元奥さんには悪夢だろうな。そう思うと喜んでいいのかわからない。
「元奥さんにとっては悪夢みたいだろうな」
「それは俺が背負うべきもので悠が背負うものじゃないよ。不倫してたなら話しは別だけど、不倫はしてないからな。俺、あのときフラれてるし」
「そりゃそうだよ。だって奥さんがいるんだもん。そんなことダメだよ」
「だろ。だから離婚した。俺には悠しかいないと思ったから。悠が襲われたときは俺が悪夢見てるみたいだったよ」
そっか。そんなに前から好きでいてくれたのか。
「とにかく。今は夢じゃないから。現実だから。それだけは覚えておいて」
釘を刺される感じで言われてしまった。でも、ノンケを好きになってそれが叶っちゃったなんて普通はないから許して欲しい。
だけど、立樹が俺のことを好きだって言ってくれるのは信じよう。
「あーでも、普通に夜景の綺麗な場所にしておけばよかった」
「なんで? 夜景見ながら呑むの最高じゃん」
「そうだけどさ、キスできないじゃん。暗がりならキスできるのに。そう考えるとあの元カレ、よく我慢できたな」
「俺に好きな人がいるの知ってたからじゃない?」
「そっかー。尊敬するよ。俺ならできない」
「後でじゃダメ? キス」
「そんなこと言ったらがっつくぞ」
「うん」
「悠って小悪魔なタイプだったんだな。あとでじっくりするからな」
はっきりと宣言されて、きっと今の俺は赤くなってるだろう。
だけど立樹にされて嫌なことじゃないし、そう思ってくれるのは嬉しいから、ちょっと楽しみにしておこう。
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