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未来のために2
「ノンケの結婚と同じ効力をもつものは日本にはないわ。でもパートナーシップ制度というものがあるの。聞いたことない?」
「あ、なんか聞いたことあります」
「パートナーシップ制度も国の定めるものではなく各地方自治体によって異なるけれど、その中で定められたものに関しては効力を発揮するわ」
「どんなのがあるんですか?」
「家族扱いにされることがあるの。病院での付き添いや手術の同意、公営住宅の入居、ローン、生命保険の受取とか地味に嬉しいのが携帯の家族割ね」
「自治体によって違うということは今言った全てがっていうことはないかもしれないっていうことですよね」
「そうね。自治体によって認められているものが違うし、自治体によってはパートナーシップ制度を認めていないところもあるから一概には言えないのよね。だからあんたたちの住むところがパートナーシップ制度が取り入れているか、取り入れられていてもどんなものかは自治体に問い合わせるしかないわね。でも、ここなら差はあっても制度は取り入れられているわよ」
「そうなんですね。ローンはいいな。ゆくゆくは2人の家を買いたいので」
同棲を始めた頃に悠には言ったけれど、ゆくゆくは2人で住む家が欲しいと思っている。
パートナーシップ制度なんて名前しか聞いたことないから知らなかったけれど、俺の名前でローンを組んでもいいと思っていたけど、パートナーシップ制度で家族としてローンが組めればいいと思った。
それに、病院での対応は考えたことはなかったけれど、そういえば家族じゃないとダメなことって結構あるなと思い当たった。
国で定めてるものじゃないというのが難点ではあるけれど、なにもないよりはいいと思った。
「立樹はノンケなのよね? それともゲイに目覚めた?」
「どうだろう。目覚めてはいないと思います。相手は悠しか考えられないので」
「悠相手なら結婚さえ考えちゃいそうな感じ?」
そう訊くあきママの目は好奇心でキラキラと光っている。
「そうですね。俺は一度結婚したからどうしたら結婚生活を長続きさせられるかってわかるんですけど、悠なら今すぐプロポーズしたいですね。長続きできると思うし、実際1年経ってるし」
「まぁ! あの子だけが特別なのね。ロマンティックー!!」
ママの目はうっとりとしている。
以前、悠がママは夢見る夢子さんになるときがあるっていってたけど、どうも今、そのモードに入ったようだ。
でも、ロマンティックかはわからないけれど、悠だけが特別というのは事実だ。
「でもでも。それなら結婚式挙げちゃえばいいのに」
「あぁ、式と写真はできるんでしたよね」
「そうよー。式挙げてパートナーシップ制度を利用すればいいんじゃない?」
悠のタキシード姿とか見てみたいな。優しい顔の悠なら王道の白のタキシードなんか似合いそうだ。
思わずそんなことを考えてしまう。
俺自身はもう一度着たいとかそういうのはないけれど、悠の姿は見てみたい。
「なーに? 今なにか考えてたでしょう。顔がニヤけてたわよ」
「いや、白いタキシード姿の悠が見てみたいなと思って」
「もうー。アツアツなんだから! 結婚式したいとかあの子言わないの?」
「聞いたことないですね。俺が一度結婚してるからかもしれないけど」
「あー。あの子ならあり得るわね。でも、あなたから言ったら喜ぶんじゃないかしら? あの子の中ではあなたはノンケのままなんだから。男同士で式を挙げようとかは考えたとしても叶わないと思ってるんじゃなーい?」
そうか、それはあるかもしれない。
俺はいまだに自分のことをノンケだと思ってるし、恐らく悠もそう思っている。だから男同士での結婚式とかは言い出せないのかもしれない。
そうだとしたら俺から言い出さなきゃいけない。
「まぁ、あなた次第だけどパートナーシップ制度と結婚式とをあの子に提案してみたら? でも、もう離婚はなしよ?」
「大丈夫です。離婚の理由は悠だったので、その悠との結婚なら離婚の理由は見当たらないので」
「もうお熱いこと。じゃあ私は報告を待ってるわ」
「悠が頷いてくれるように祈っててください」
「そうね。あの子がノーって言うかもしれないものね」
「はい」
「じゃあ祈っててあげる。そしていい報告待ってるわ」
「はい」
男同士で結婚はできないと悲観していたけど、準ずるものがあると思ったら少し楽しみになった。帰ったら悠に話そう。
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