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番外編17

 ワイナリーまでは車で1時間ほどで、立樹の運転で行く。  ワイナリーでは工場見学もできるらしい。でも、一番のお目当てはワインを買うこと。できたら赤と白1本ずつ欲しい。 「ワイナリーなんて初めてだよ」 「俺は山梨で一度行ったな。工場見学なんてしてないけど。お目当てはワインを買うことだから」  そう言って立樹は笑う。確かにそうだ。収穫体験なんていうのもワイナリーによってはあるみたいだけど、そんなのは一年中やっているわけじゃなく、収穫は8月の終わり頃にするものだ。つまり9月に入ってしまっている今は収穫は終わってしまっている。なので工場を見ることくらいしかない。  ワインを買うのはどこででも買えるけど、ワイナリーで買う場合テイスティングできるところがあるということだ。テイスティングできると自分好みの1本を見つけることができる。  そんな話しをしていると、あっという間にワイナリーに着く。まずは工場見学から。  工場では一番最後の収穫である甲州が機械の上に乗っていた。コンベアの上はぶどうだらけ。こんなにすごい量なんて収穫するのは大変だろうなと思う。  そして圧搾。圧搾でできたものはぶどうジュースだ。ぶどうジュースを試飲できるところもあるらしいけれど、ここではできなかった。でも、工場の中はむせかえるほどのぶどうの香りが充満している。  このぶどうジュースになったものを樽に詰めるんだな、と見ている。 「テイスティングしに行こうか」 「うん」  工場を出て、ワインのテイスティングコーナーへ行く。 「立樹に任せたからな」 「レンタカーだとこういうとき不便だな」  テイスティングするのは当然だけどアルコールの含まれたワインだ。それを少量とはいえテイスティングすると車の運転ができない。  行きは立樹が運転してくれたから帰りは俺の運転になるので、テイスティングは立樹1人だ。2人で呑むものを選ぶわけだけど、俺は立樹の舌を信じている。  立樹は順々にワインを口に含んでいく。それなりの種類をテイスティングして赤1本、白1本を選んだ。 「多分、悠も好きな味だと思うよ」 「なら大丈夫だね。立樹は俺の好みの味を知っているから」 「外れたらごめんな」 「立樹の舌を信じているから大丈夫」 「なんか期待されると不安になってくるよ」 「大丈夫だよ。俺、立樹が選んだものも作る料理も全部美味しいって思ってるから」 「そっか。じゃあ良かった。よし、ワインも買ったし神社に寄ってから帰ろうか」 「うん。ナビよろしくね」 「了解」  車に乗り、神社に向かいながら、どんな神社なのかを立樹に訊く。 「日本最古の夫婦神を祀っているんだよ」 「夫婦神って言うと、伊邪那岐命と伊邪那美命?」 「そう。だから縁結び」 「なるほどね。で、強運を授かるっていうのは?」 「2本のご神木のうちの参道にある1本の楠の根元にあるコブに触れると強運を授かるって言われてる」 「根元のコブね。それをこれから触りに行くわけだ」 「そう。もう良縁は必要ないけど、強運ではありたいからな」 「うん。まずは出世」  立樹も俺も今のところ順調に進んではいるけれどこの先はわからない。だから強運を授かりたい。出世って強運じゃないのかもしれないけど、出世なんてどこでどう転がるかわからないから。それに強運なら宝くじとか当たるかもしれないし。 「宝くじって言うなら、今年の年末ジャンボ買うか」 「買うーー! で、当てるんだ。なにに使うか考えないと」  俺がそう言うと立樹は助手席で笑った。

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