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番外編21

「あーぁ。もう帰るのか。もっといたい。すごい贅沢できたし、すごい楽しめた」 「なら良かった。また来よう」 「うん! でも5周年でこれだと10周年はどうなるんだろう」 「悠が楽しんでくれるようになにか考えるよ」 「ねぇ、でもさ。俺、楽しむだけで立樹になにもしてない。俺だって男なのにさ。いや、考えない俺が悪いんだけど」 「そんなのはいいんだよ。俺はしたいからしてるだけだから、悠は楽しんでくれればそれで十分なんだよ」 「そうは言っても……」 「そんなのはどうでもいいの」  どうでもいいと言われた。まぁ楽しむのは楽しんでるよ。帰るのが嫌なくらいには。そうだ。立樹が記念日になにかしてくれるなら、俺はなにかプレゼントをあげよう。それならなにもしてないなんて考えなくてすむ。そうしよう。そう考えると少し気持ちが楽になった。東京に帰ったらなにか買いに行こう。   「じゃあこれからも記念日のことは立樹に任せるよ。いいの?」 「任せて。だけど、どうにも浮かばないときは悠に相談するかもしれないけど」 「そんなのは構わないよ。そのときは2人で決めよう」 「まずは来年だよな」 「まだ今年終わってないよ」 「でも、もう帰るだけだから」  立樹はもう来年の記念日のことを考えるらしい。俺は今年の分を来週買いに行こうとしてるというのに。なんでこんなに差があるかな。モテる男はやっぱり違うんだな。 「休みが取れるなら近場の海外ってあり? サイパン行きたい。ゆっくりできそうじゃない?」 「そうだな。やっぱりリゾートがいい?」 「今リゾート地にいるからかもしれないけど。観光するなら台湾とかかな?」 「台湾いいんじゃないか? 大学のとき一度行ったけど楽しかったよ」 「いいなぁ。俺、台湾行ったことないんだよ」  頭の中は海辺でゆっくりすごすサイパンと美味しい飲茶を食べる台湾でいっぱいになる。どっちも行ってみたい。基本的に旅好きだから、こうやって考えているだけで楽しい。  記念日が秋だからシルバーウィークで旅行できるのがありがたい。もし大型の休日になるようなら少し足をのばすこともできる。  そんなことを考えてパートナーシップ宣誓や結婚式を決めたわけじゃないけど、新婚旅行に行きやすいのがたまたま秋だっただけで。でも、記念日が秋で良かったとこういうときは思ってしまう。 「なんか色々考えるだけで楽しい。来年の参考にしてね。でも、立樹が決めたことならなんでもいいから」 「そんな可愛いこと言わないの」 「だって、ほんとに立樹が考えてくれたことならなんだって嬉しいもん」  ほんとに立樹が考えてくれたことならなんだっていいんだ。旅行じゃなくて食事だけだっていい。ただ記念日を祝えるだけでいいんだ。なにもしなくても立樹といられればそれで十分だ。立樹の隣にいられるだけで幸せなんだから。 「悠。もう眠いんだろ」 「うん、眠い……」 「じゃあ明日は朝早いからもう寝よう」 「うん」  そして俺は来年の記念日の前にプレゼントをどうしようかと考えながら目を閉じ、夢の世界へと旅立った。         END

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