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第1話

「だーかーらー! 嫌だってぇ! そういうのは大人になってからプロのおねーちゃんとかに頼めよぉ!」 「おまえが履くんだよ!」 「可愛いんだからパンツまで可愛くしろ!」 「べ、別に好きで可愛く生まれたわけでもね、ぇし……」 「あー! 泣いたー! 大人のくせに泣いたー!」    おれほどのポンコツが他にいるなら会ってみたい。  小学生にまでいじめられるなんて……。    そもそも、なんで公園歩いてるだけなのにクソガキにスカートめくられるんだよぉ! スカートっつかただのボロきれが結果としてワンピースの形状になってるだけなんだけど……。    話は遡る。  といっても、簡潔すぎて逆に意味がわからない。  まず、おれは先日、寝ぐらにしている公園でガキにスカートをめくられた。そのとき、よれよれの男物のパンツを履いていたのだが、もっとエロいパンツを履けよ! 履かなきゃダメだろ! と何の落ち度もないはずなのに酷く責められ、怖かったのでそのときは逃走したが、今、なぜか同じ公園で同じガキたちからフリル&レース付きの紐パンを持ってこられて履くように迫られている。 「やだって言ってんじゃん……こ、この、せいはんざいしゃよびぐん……」  えぐえぐ泣きじゃくるおれに、あれほどおれに紐パンを着用させることにこだわっていたガキたちは打って変わって冷たい視線を向け、 「良い大人が鼻水垂らして泣くとかないわー。萎えるわー」  と言い捨てて去っていった。  傷つく!  おまえらが泣かせたのに!  ひぐひぐ泣き続けていたら、気づくと、ぬっと背のでかい優男風のお兄さん――三十路だろうか――がおれを見下ろしていた。 「君。迷子かい?」 「いや、あの、違いますけど」 「何か辛いことでも?」 「うん」 「地面にへたりこんでいるのは似合わないよ、お姫さん。ベンチに座ろうか」  お姫さんと呼ばれると相手が王子に見えるくらいにはおれはちょろいので、ぽーっと逆上せながら手を取られて立ち上がり、彼と並んでベンチに座った。  おれは事情を話した。 「へえ。世の中は怖いねえ。そんなタチの悪いエロガキがいたものか。もう一歩早く僕が通りすがっていればシバき回していたのに」  「あいつらが悪いとも言いきれねえ。おれが、その、実は、ヒトじゃなくて、淫魔……だから、おれのフェロモンであのガキたちは狂ってたんだと思う。  あいつら、思春期前期くらいではあったし、エロいことに興味が出てくるように体が作り変わり始めたところにちょうど淫魔のフェロモンなんか浴びちまって、今後の人生大丈夫かな。変に歪んでなきゃいいけど。  おれはフェロモンの蛇口の開け閉めが自分の意思で上手く操作できねえんだ」  頬杖をついて聞いていた彼はおれの頭を撫でた。彼は雄としての繁殖能力が優秀なようで、そのことを本能で嗅ぎつけたおれは淫魔にとっての捕食器官である雄膣をきゅうぅぅっ♡ と疼かせた。 「あくまでお人好しで自責的なんだねえ、君は」  彼の言葉は半分以上耳に入らず、おれは気がつくと彼の頬に手のひらを這わせ、鼻から声を抜けさせながらキスをしていた。 「んっ♡ うぅ……♡ ふ♡ ふぅ……♡」  彼は意外にもすんなり応えてくれて、舌を入れてきたり、おれの舌を吸ってきたりで、おれはオスの淫魔にとっては膣とほぼ同義であるアナルをぐちょぐちょに濡らしていた。 「これが君のフェロモン? 凄いねえ。猛り狂ってしまうよ。僕のうちへおいで。もっといやらしいことをしよう」  手を引かれて彼の家へ帰る。おれの意識は朦朧としてふらふらと歩く。  フェロモンのスイッチ、一旦、切らなきゃ……。他に誰か寄ってきたらトラブルになる……。  そう思うのに、全然上手く操作できなくて、むしろおれは、今にも潮でも吹いてしまいそうなほどの発情を持て余していた。  彼の家はやや古めかしい一軒家だった。  玄関をくぐって即、寝室への階段を上ったので、一階の部屋はろくに見なかったし、セックスで頭がいっぱいの今のおれには興味もない。 「一戸建てだから、おっきい声出して大丈夫だよ」  「あ……♡ ぁ……♡ はぁっ♡」  まだ触れられる前からおれは濡れそぼって小さく喘いでいた。  すぐに彼の手がおれを脱がせ、彼の指がおれのアナル(捕食器官)に入ってくる。 「ここ、こんなに、みずうみのように水分をたたえるんだねえ。人間の男ならただ排泄するための器官で、入れることに使ったとしても自力で濡らすことはできない。淫魔とは偉大なものだねえ」  話しながらも彼は滞りなく指を動かした。 「ッああ゙ぁ゙♡♡ しょこォっ゙♡ 強くしないでへぇっ♡♡」  今日はたくさん濡れているからよく滑る。彼の指も動きやすいだろう。オスの淫魔の特徴的な濡れるアナルに驚いたり、面白がる人間はいても、みずうみに喩えられるのなんて初めてだ。この人、何者なんだろう。  ぬるぬると器用に動く彼の指にイイところを可愛がられて内腿に力が入るが、意外と腕力が強く意外と強引な彼に脚を思いきり割り開かされた。 「艶やかな長い黒髪の中で溺れている抜けるように色の白い小柄な体、仔猫と同じかたちの林檎色の瞳。鴉の羽のような睫毛、白く尖った八重歯、小さくて厚い桃色の下唇……君は完璧に美しい。乳首の色も形も完璧だ。愛らしくぷっくりと尖って、熟れたての果実のようだ。こんな可憐なピンク色は、色白で肌の綺麗な女の子を片っ端から脱がせたとしても、そう見当たらないだろうね」    まあ、僕はそんな無粋な真似を女性にすることはないけれど、と彼は付け加え、おれの乳首に舌先をつけた。 「ん゙っ゙♡」 「好きに鳴いておいで。僕しか聞いていないから」 「ん゙ッ゙ぅん゙♡ お゙ほっ♡♡♡ そこでしゃべったら、息、あちゅい♡」 「ふっ。可愛い♡」  指だけでなく早くちんぽを挿れてほしかった。こんなに濡れてるのにひどい、絶対おれが欲しがってるのわかってて焦らされてる。  ぺろぺろ、ぢゅるぢゅると乳首を嬲られながら、おれはもう限界で、声に出してねだるよりも先に……。  ぐぅぅ〜っ! ぎゅるぎゅるぎゅる〜! 「うわっ」  おれは思わず真っ赤になる。腹の虫を鳴かせてしまった。    人間の性欲は、淫魔にとっては食欲……。  おれはもう長いこと精液を食べておらず、あのクソガキの中にもしも精通してる子がいたとしたら、おれは年端もいかない子どもの前で愛液を垂らしていただろう。 「いい感じにエロいムードに持ち込めて、おれとしてはよくやれてると思ったのに、こ、こんな色気のねえことがあるかよ……。やっぱりおれはミソッカスだあ……」  おれは丸まって泣きじゃくった。 「ふええぇぇぇぇ〜!」  彼は優しくておれの頭を撫でてくれた。 「お腹が空いているの?」 「めちゃくちゃ空いてるのぉ〜! 飢えて死にそうなのぉ〜!」  おれは下の口からの涎――愛液――だけには留まらず、上の口からもだらだら唾液を垂らした。  それは、これまでセックスをした人間たちから「犬」と揶揄され、色気がないと軽蔑されてきた姿だった。 「お、おれは……どうせ、犬で、色気のないダメダメ淫魔だぁ〜!」  惨めさに涙が止まらなくなったおれの耳元で彼は囁いた。 「犬? そんなの、この世の可愛いものの代表格じゃないか。僕なりに倫理のストッパーがあるからわんちゃんには手を出さないだけで、その可愛さをそのままに、倫理に責められない器に詰め込んだなら、僕は迷いなくその果実を食べるね」  へ、変態だ……と思った。  しかし、おれにとって救いになる言葉をくれた。 「じゃあ、たべて♡ おれもたべるから♡」  おれは自分から大きく脚を広げ、彼の言う「みずうみ」をとうに超えて海みたいになってしまったアナルを二本の指で開いてみせた。  途端、彼の肩に脚を担がれ、一気に奥まで突き入れられた。 「んお゙ッ゙♡♡ ほ♡ ひあぁぁあ゙あ゙っ゙♡♡♡」  おれは下の口で夢中で彼のちんぽにむしゃぶりつく。ほぼ無意識の行動だった。 「君は本当にいやらしくて可愛いね。こんなにちゅうちゅう吸い付いて、久しぶりにありつく食事に大喜びだ♡」 「くぁ、あ゙っん♡ あっ、ふお゙ッ♡♡ もっと♡ もっと♡ きもちいのいっぱいちょうだい゙っ゙っ゙♡♡♡」 「だいぶ緊張が解けてきたかな? 言葉でのお強請りが達者になったね。可愛い」 「かわいい?」 「ああ、可愛いよ。君は(つくづく)、可愛いねえ。よしよーし♡」  入ってるちょうどその場所――ちんぽの形に膨らんだ下腹部を軽く押すように撫でさすられて、おれは身も心もどんどん雌へと作り変わっていく。 「きもち、ぃ゙♡♡ しゅごく、きもちい゙の♡ いっぱいかわいがって♡ ううん、こわして♡ もうどっちでもいいよぉ♡ しゅきにしてくだしゃい♡♡♡」  目つきもどろどろに蕩けているであろうおれの瞳から涙までとろとろと溢れ出した。 「きもちよすぎて泣いてるのかい? おしりの穴もだらだらと愛液()を流して泣いてるのにねえ?」 「ひぐっ、言わにゃいでへぇッ♡ はずかし、っからぁっ♡♡♡」 「でも、君は今、こんなに締めつけているよね? 恥ずかしいことを言われて感じちゃう変態さんなのかな?」 「へ、へんたいじゃねえもん……っ」 「君のどこがミソッカスでダメダメ淫魔なの? こんなに才能があるのに」 「ほんとに!? ひぁっ!? ん゙ほッ゙♡♡」  才能という言葉におれが歓喜の反応を示した瞬間、彼のカリ高の長いちんぽの先端がおれの結腸をこじ開けにかかった。 「結腸口(ここの扉の鍵)を開けてもっと奥に入ってもいいかな? 君なら喜んで受け入れてくれるよね?」  ね? と目で圧をかけられ、彼の雄を感じたおれは彼の背中に脚を絡めて大歓迎する。 「いれて♡ おれ、こわされていいよぉ♡」  もっと、もっと、この男の雄を味わいたい……!  シて♡ シて♡ ちょうだい♡  おなかがきゅんきゅん脈打って、彼の精液を受け止める準備を着実に整えている。 「じゃあ、いくよ……!」  どぢゅっ♡ 「お゙ほぉぉぉお゙オ゙ォォ♡♡♡」  はいっ、て、きたあ゙ぁ゙あ゙♡  目の前がチカチカしてたまんにゃい♡  イっ゙ちゃ゙うぅ♡ 頭こわれておかしくなっちゃ゙うぅゥ♡ 「ああ……ここはとてもイイところだねえ。あたたかくて狭い。突くよ?」  もう、おれは返事ができないけれど、彼は腰を動かし始めた。容赦なく責め立てられる。  うそっ♡ はげしすぎゆ゙っ♡ いきできねぇっ♡♡♡ 「〜〜〜〜〜ッッ♡」  プシュッ♡ プシャァァア〜〜ッッ♡♡♡  潮、しおっ、吹いちゃっ、たあぁっ♡ ♡  彼の背中に絡めてある脚がガクガク震えながら彼にしがみつく。 「捕食されている気分だ。貪欲で……愛らしい顔に似合わず獣じみて、薫るほど豊潤な美とエロスを溢れさせている……!」  彼は何やら感動した風に溜息混じりに呟いて、イった。  アァッ! せーえきっ♡ せぇえき来たァ♡♡♡  食べなきゃ♡ たべなきゃ♡ 久しぶりの食いものッッ♡♡♡  ゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクっっ♡  彼も溜まっていたらしく、大量の精液がおれのナカになだれ込んでくる。  溜まってドロドロに煮詰まったザーメン、味が濃くておいしい♡  下の口で思いきり吸いついて、吸い上げて、飲み込んだ。やっと腹が満たった。何日ぶりだろう。  すっげえ幸せだぁ♡  ……ふぅ♡ 食った食った♡   「げふっ♡」  満腹感が幸せで気が緩んでしまい、つい抑えきれないげっぷをしてしまった。  ああッ! おれときたら、また色気のねえことを!  しかし、彼は萎えるでもなく興味深そうに笑っていた。 「げっぷは上の口でするんだね。……ああ、下でしたらおならだもんね」 「やめてください……」  おれはあんまり恥ずかしくて拗ねてしまった。 「ふふ。ごめんよ。精液(ごはん)は美味しかった?」 「それは、もう……。ご馳走様でした」 「ふふふ。礼儀正しい子だねえ。好きだよ」  彼はおれの頭を撫でた。 「ん……。ドカ食いしたからねみぃ……」  彼の精液はすごく美味しかったから、本当はおかわりしたかったけど、強烈な眠気に負けておれはその場で寝落ちしてしまった。 ★  おれは目覚め、当然のように彼と二人でお風呂に入って汗を流すことになった。もうずっとお風呂に入れてなかった体を彼に洗ってもらう。 「乳首腫れちゃったね。弄りすぎたかな」 「いい。じんじんしてきもちいし」 「さすがは淫魔。好色だねえ」 「言うなよぉ」 「コンプレックスなのかい?」  おれは頷く。 「もっと上品な生き物に生まれたかったよ」 「僕は簪 苑生(かんざし そのお)。結構売れてるエロ売文家だよ」 「おれは、リケ。淫魔ってこと以外に特に何もねえよ」  彼が名乗り、おれも名乗る。 「それで十二分だよ。特に僕のような人外フェチの空想癖の変質者にとってはね」  へんしつしゃ……。  先が思いやられてきた。でも、ソノオのセックスが最高だったことには違いない。 「ところで君の服装は僕の中の淫魔のイメージと随分、違っていて色気がないけれど」 「あんなに肌を出すの恥ずかしんだよ!」 「え? そうなのかい?」 「わかってる。そう思っちまう感性だってどうせミソッカスなんだ」  おれは惨めさで真っ赤になった 「そう。たしかにそれはミソッカスだね」  彼が品のいい笑顔で毒の矢を打つ。 「ぐはっ!」  おれはもろにダメージを食らった。心臓痛い!  彼はからからと鷹揚に笑った。 「ごめんね、いじめすぎた。僕は君を気に入ったんだ。僕には好きになった子はいじめてしまう悪癖がある」 「え、えぇ〜っ!」  サド!? セックスでなんとなく勘づいてはいたけど!  先が思いやられる……。   (つづく)         

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