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13-4.
フレイとレイヤは背丈や髪色や瞳の色、そばかすの浮かんだ頬やその顔立ちまでもがそっくりで、違うところと言えば、レイヤの方が髪が長く、両耳の後ろでそれぞれ束ねていると言うことくらいだ。
「双子?」
フレイは少々不満げにロキの問いに首を振った。
「なにをいうか、レイヤと私ではいくつも歳が離れているぞ、バカなことを言うでない」
年頃も全く同じにみえるのだが、ロキはそのことについてそれ以上言及しないことにした。
「ねえねえ! あなたたちのお名前は何て言うのかしらっ?」
レイヤは踊るように、ロキとフェンの周りをくるくる周りそう尋ねた。そのレイヤの後をグリンがフゴフゴ楽しげに追いかけている。
「俺はロキ、こっちがフェン」
ロキが告げると、フレイとレイヤは同時にピタリと動きを止めた。
「ロキ?」
フレイに名を呼ばれ、ロキは戸惑いながら頷いた。
「あ、そうだけど……」
一瞬、背中がヒヤリとした。
二人の調子に油断して安易に名乗ったのはまずかったかもしれない。
彼らがオーディン側の人間で、オメガの名前を知っている可能性を考えるべきだった。
「ひどい名前だな」
「ほんとに、ひどい名前」
フレイとレイヤは口々に行った。その表情には憐れむように眉を寄せている。
「ひ、ひどい? そうかな」
そんなことを言われたのが初めてで、ロキは怒りを感じるよりも、なんだか切ない気持ちになった。
「ああ、ひどいぞ、お前の親はどんなつもりでそのような名をつけたんだ」
フレイが、容赦なく言った。
「ひどいなんて、そんなことないよ。俺は素敵な名前だと思うけど」
そう言いながら、フェンはロキの体に抱きつき、慰めるように肩に顎を乗せてくる。少なからず気落ちしたロキの様子に気がついたようだ。
「しかし、ロキはこのアースガルドにおいては大罪人の名前だぞ」
「そうよ、その名前をきいて、気分の良くなる人はいないわ」
随分な言い草だ。
「大罪人って……いったい何をした人なんだ?」
ロキは尋ねた。
しかし、フレイはそれに応えず、5本の指を広げた手のひらをピタリとロキの眼前に掲げた。
「その前に、ニーズヘッグの治療が先だ」
そう言って頷くと、フレイは背中を逸らして後ろ手を組み、奥の部屋へと下がっていく。
「ああ、レイヤ、そいつらを風呂に入れてやってくれ、ついでにそのドラゴンの涎臭い衣服を着替えさせろ」
去り際に、フレイはそう言って鼻を摘んだ。
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