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15-6.

 まさかこのまま犯されるのではと恐怖を感じ、ロキはオーディンの姿を見上げる。  覚悟はしていた。なんの感情も持たずやり過ごすつもりでいたが、できれば痛みや恐怖は避けたかった。 「やめろオーディン! ちゃんとやるから、縛るのは……って、は?」  ロキは驚き目を瞬いた。  オーディンはロキを縛り上げ吊るしたまま、自分はさっさと寝台に寝転がったのだ。 「な、おい、ちょっと、何してんだ」 「うるさい、チビ、黙れ」  そう言って、ロキに向かって手を払うそぶりをするとオーディンは背を向けたまま枕に頭を置いて毛布を被った。 「おい! オーディン! 器創るんじゃないのかよ!」 「あー、うるさいうるさい! 今度喋ったらその口縫うぞ!」 「ふざけんなって!」 「チッ」  舌打ちしたオーディンはガバリと寝台から起き上がった。挑発に乗ったのかと思ったロキは身構える。  しかし、オーディンはロキの顎を掴み上げると、うんざりしたようにため息をつきながら、ロキの口に布を押し込んできた。 「んぐぅっ!」 「だまれチビ」  オーディンは吐き捨てるようにそう言った。 「匂うな。品のない匂いだ。鴉に何か飲まされたか」  言われてはじめて、ロキは自分の体で昂り始めた熱に気がついた。  ここに来る前に、鴉にお茶を飲まされた。  それは催淫効果があり、オメガの匂いを誘発するものだと聞かされていた。  どうせやることやるのなら、正気を失うほうが楽だろうかと思ったロキは、鴉に言われるがままそのお茶を飲んだのだが、まさかオーディンがこんな予想外の行動に出るとは思いもしなかった。 「浅ましいやつだ。器を創って神としての地位を手に入れよう、といったところか? あ?」 「んぐっ!」  ロキはただ唸った。  どういうことだ、オーディンは自らオメガに器を創らせようとしているのではないのか。だからわざわざ遣いまでだして、ロキを連れて行こうとしたのだと思っていたのに。  口を塞がれているせいで、その疑問を今目の前の相手にぶつけることができない。 「あー、最悪だ。くさい」  オーディンはわざとロキに見せつけるように顔を顰め、顔の前で手を振った。寝台に戻ると、脇のテーブルに置かれていた水差しからグラスに水を注ぎ、そこに何やら小瓶から液体を流し込んでそれを一気に飲み込んだ。そしてまたのそりとロキに背を向け、寝台の上で横になった。 「んー! んんんー!」 「あーうるせっ」  ロキは必死に唸ったが、その後もオーディンが態度を変えることはなかった。やがてオーディンは頭まですっぽり毛布を被り、どうやらそのまま眠ってしまったようだ。

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