128 / 155

17-5.※

 正面に回った男が、ロキの下履きに手をかけた。ロキは無意識に拒むように手を伸ばしたが、あっさりと跳ね除けられてしまう。引き下ろされた衣服から、薬湯と香のせいで熱くなったロキの性器がたちがる。布に擦れた先端が糸を引いていた。  それと同時に背後の男がロキの裾から手を滑らせて、胸の突起を弄っている。 「やべぇ、すげぇ匂い」  背後の男はロキの首筋に鼻を埋めてわざとらしく息を吸い込んでいる。突起をいじるのとは反対の手をロキの太腿に回して、脚を開くように抱え上げロキの性器を握り、先走りを塗りつけるように扱き始める。ロキは背中に押し付けられた男の昂りを感じ、身を捩った。 「こっちももうびしょ濡れだ」  ロキの下履きを降ろした正面の男が、その指をロキの後孔に滑らせた。孔からは、じくじくと蜜が溢れ、男は恍惚とした表情でそれを指に絡めた。そして、ぐちゅりと卑猥な音を鳴らしながら孔に指を入れ込んでいく。 「んっ、あっ……ぁぁっ!」  男の指がロキの内壁を掻いた。同時に性器と胸の突起を嬲られる。  男たちの不快な息が皮膚にあたり、ロキは表情を歪めた。しかし、オメガの体は勝手に快感を掻き集める。後孔はさらに蜜をこぼし、男の指を招き入れるように締め付けていた。 「こいつ、大人しいな」 「足りないんじゃないのか? ほら、俺の指も入れてやるよ」 「ぅっ……あっ、んぁっ!」  もう一本無骨な指が入れ込まれ、ロキは体を跳ね上げた。二人の男はそれぞれちぐはぐに動きながら、ロキの内部をこじ開けるかのように広げていく。 「はっ、んっ……ぁっぅっ……」 「おー、そうかそうか、気持ちいいな?」  背後の男は指を動かしながらも、まるで動物でも愛でるかのようにロキの頭を撫で髪にキスをする。  確かめる気も起きないが、こいつらも神の端くれだとするのなら、彼らにとっては人間のロキなど対等な存在ではなく、猫でも撫でている気分なのだろう。  二人の男に逃げ場なく責め立てられ、ロキの意識は遠のいていく。快感で痺れる頭は、ほとんど理性を手放していた。  オメガの本能が解放を求めている。  誰でもいいから犯されたい。中を満たして欲しい。そんな言葉が脳裏に浮かび、しかし、わずかに残ったロキの理性がそれを強く拒んでいる。  その間も与え続けられる快感に、ロキは喘ぎ身を捩った。  ふと、涼やかな風が髪を揺らし、部屋に充満していた香が微かに薄らいだ。  オーディンが窓を開けたのだ。退屈そうに窓枠に肘を置き、星の浮かぶアースガルドの空を見上げている。床に押さえ込まれたロキの位置からはまるで窓枠という額縁に収められた一枚の絵画のようだった。 「んっぁっ……!」  小刻みに中を嬲られた後、男たちが指を引き抜いた。前にいた男が徐に、下半身の衣服をくつろげる。すでに男のものは硬く迫り上がっていた。  ロキはそれを目の当たりにして、床に手をつき後ずさるが、背後は別の男に抱え込まれているのでほとんど意味がない。  正面の男はロキの両足を抱え、引き寄せた。 「下手くそだな」  突然ぽつりとオーディンが呟き、男たちが動きを止める。 「え? 良さそうにしてるけど」 「そんなことないよな? 気持ちいいだろ?」  男たちは揶揄うように、ロキの体に舌を這わせる。 「いや、違う。遠吠えだ。聞いたこともないくらい下手くそだ」 「ああ、最近よく吠えてるな」 「野犬か、狼でもいるのか」 ーーワフォーンオンオン  ロキの耳にも、その遠吠えが届いた。 「まあ、いい。気にするな、続けろ」  オーディンは相変わらずロキに一瞥もくれないまま、ひらひらと手を振ってみせた。  再び男たちの視線がロキに注ぐ。  正面の男が、ロキの後孔に先端を押し当てた。入り口で擦れた水分がぐちゅりと卑猥な音を立てる。 ーーワフォーンオンオン 「……いっ……やだっ……」  ロキは体を捩った。 「……っめろ……!」  脚を持ち上げ、正面の男の肩に足裏を押し付ける。男は、驚いたように動きを止め、そのロキの足を避けるように身を引いた。 「やめろっ! はなせっ……!」  ロキは激しく体を揺らし、四肢を大きく振りあげた。

ともだちにシェアしよう!