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夢見る俺たちのオメガバース (8)

「人のものに手を出すなんて、おいたが過ぎるよ? 木瀬航生くん」  ガタンッ。  ドタンッ。  バタンッ。  激しい物音が三回して、あたりがシンッと静まり返った。  聞こえるのは俺の息遣いと、なにかが垂れるポタポタという音だけ。    頭が、フワフワする。  胸が、ドキドキする。  お尻が、ジンジンする。  望んだ刺激に浮かされていた心が、急に現実に引き戻される。  突っ張った腕の間から垣間見えるのは、淫らな汁に塗れて色を変えたシーツ。  コポコポ。  お尻の穴が、沸き立つ音がする。  ジクジク。  お腹の中が、疼く音がする。  ガラガラガラガラ。  信じていたものが、崩れていく音がする。  ああ。  なんてことだ  夢じゃなかった。  俺は、Ωだ。  これから、どうすればいい?  どんな風に、生きればいい?  わからない。  何も、わからない。  嫌だ。  怖い。  怖いよ。  行かないで。 「ひとりにしないで……っ」  俺は必死に振り返ろうとして、でも、できなかった。

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