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01. 距離感バグってる二人 ②
「森島が麻琴んちに泊まるのも、朝一緒に登校するのも、膝の上に当たり前のように座るのも、まぁ、百歩譲っていつものことだとしよう……」
そこで、ふぅっとひと呼吸を置く。そして渾身の一言のように、ハッキリとした口調で問い質した。
「ほんとにさ、お前ら付き合ってないの?」
何度も言われたこのセリフ。太陽曰く、普通の友達はそんなに距離感バグっていないそうだ。
でも他の奴らのことなんて知らないし、昔からおれ達はこんな感じだ。
物心ついた頃からってレベルじゃないんだ。この世に生を受けた日から隣りにいるんだぞ?
そりゃ、周りを見てもおれ達みたいな雰囲気の奴らは少ないなぁ……とは思うけど、家とかクラスメイトのいないところでは、距離感近いかもしれないじゃないか。
だから、人は人、おれ達はおれ達。距離感バグっていようがなんだろうが、付き合ってるんじゃないかって勘ぐられようが、違うとしか言いようがない。
「うーん……? 付き合ってないけど?」
何を期待しているのかは分からないけれど、いつもと変わらない返事をすると、やっぱりその返事かーとがっくり肩を落とした。変なやつ。
太陽にも、きっとそんな唯一無二みたいな友達が出来るよきっと。
おれは、太陽とおれ達の関係もなかなかに親密だということさえも気付かないまま、目の前で項垂れる太陽の肩に宥めるように手を置いた。
今は男女の性の他に、昔はなかったとされる『アルファ』『ベータ』『オメガ』という第二の性がある。
人口の二割程度がアルファで、一割程度がオメガ、残りはベータと言われている。
一般的にアルファは全ての能力が高く、国のトップや有名アスリートなど、多方面で活躍している者が多い。
ベータは本来の男女と何も変わらない、普通と分類される人々だ。
オメガは男性でも子を授かることができる種だ。定期的にフェロモンでアルファ、時にはベータでさえ誘ってしまう発情期がやってくる。ひと昔前はそれ故に虐げられたりしたらしいが、今は質の良い抑制剤も開発され、日常生活で困ることはほぼ無くなった。
蒼人はアルファでおれはオメガで太陽はベータだ。だからきっと、第二の性をよく分かっていないベータの太陽が、ちょっと仲が良いだけで勘ぐるのだとおれは思っている。
でもオメガの特徴であるヒートがまだ来ていないおれは、正直第二の性が何かって言われても、ピンとこない。
今のおれはベータの太陽と何ら変わらないと感じているし、本当は検査結果が間違ってるんじゃ? なんて実は疑っていた。
けれど、毎年行われる健康診断での結果はいつも同じ。実感はなくともオメガということを心にちゃんと止めておいてと、両親にも口を酸っぱくして言われている。
実感のないおれは、過保護だなぁ……なんて笑っていたのだけど、まさかあんなことになるなんて、おれは予想さえしていなかった。
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