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02. 太陽との出会い ②
「おれは由比麻琴 。こっちは森島蒼人 。二人とも第二小」
おれの紹介に、蒼人は小さく会釈をする。
小さな頃からあまり周りとかかわらずにおれとばかり一緒にいた弊害なのか、極端に口数は少ないし明らかにコミュニケーション不足だと思う。
そんな蒼人を見て察したのか、太陽はおれに的を絞って話しかけてきた。
「お前らって、いつもそんな感じなの?」
先程の『付き合ってんの?』という問いかけに対しては、全く意味がわからないので首を傾げるしかないが、『いつもそんな感じなの?』と聞かれたら、首を縦に振ることに躊躇はない。
「おれ達、産まれた時からずっと一緒で、家族ぐるみで仲が良いんだ」
太陽の質問するところの意図が分からず、純粋に仲が良いんだなと言われたと思い、それが嬉しくてニコニコと笑顔を見せて答えた。
先程一瞬だけ持った警戒心など、あっという間に消え去ってしまっていた。それだけ、太陽は人の懐に入り込むことに長けているのだと思う。
「そっかぁ……。んで、それで付き合ってないんだ?」
そこで再び、太陽の質問がふりだしに戻る。
「んー? 別につきあってないし」
そう言って首を傾げるおれに、太陽は苦笑する。
産まれた時から一緒で、家族ぐるみで仲が良くて。……それが当たり前になっているから、そんなこと言われる意味が心底分からなくて、うーん……と唸ることしかできない。
太陽は蒼人へ視線を向けると、ポンポンっと肩を叩いて何やら一人分かったように頷いた。
はじめましてがそんな感じのスタートだったわけだけど、おれ達はいつの間にか三人で過ごす事が多くなっていた。
おれがオメガで蒼人がアルファで太陽がベータ。一見アンバランスかのように感じる組み合わせだったけど、意外にうまく行っていた。
でもおれと蒼人はアルファとオメガの教育に特化している高校へと進学を決めた。
だからこんな三人の関係も終わりだと思っていたのに、太陽も同じ高校への進学希望を出すと聞いて驚いた。おれ達と一緒に過ごす中で、第二性に興味を持ち、学びたいと思ったんだそうだ。
共通の目標を持ったおれ達は、中学二年の冬から本格的に受験勉強を始めた。一般的にはまだ早いと思われる時期だったけど、おれ達の目指す学校は人気もあり難易度も高い。三人揃って合格するためには、早すぎることはなかった。
蒼人と二人だけの世界に中学生になって飛び込んで来た太陽の存在は、おれ達の産まれた時からの関係を崩すことなく、自然にうまく調和していった。
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