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06.〈挿話〉高校一年生の卒業式(蒼人視点)①
二人が通うこの学校は、アルファとオメガの教育に力を入れているから、当然他の高校よりも突出してアルファとオメガの在籍数が多い。
だから、世間的には希少とされるバース性でも、ここでは友達や恋人が作りやすい環境だといえた。
そんな中、目の前には手を繋いで照れ臭そうにお互いを見て微笑む二人。
「俺達、番になったんだ」
久しぶりに顔を見せた先輩達から話があると言われたのが今朝の事。そして今、放課後の屋上にいる。
いずれ番にもなるし結婚もすると前々から言っていたから特に驚きはしなかったが、想像より早かったという点では少しびっくりした。
「おめでとうございます。……でも、卒業後だと思ってましたよ」
俺と同じ考えなのか、隣で麻琴 が少し驚いた表情を見せながら言うと「その予定だったんだけどな、ちょっと色々あってさ」と頭をポリポリかきながら言うので、それ以上深く踏み込むのはやめておいた。
この二人には、アルファとオメガの先輩としてたくさんのことを教わってきた。……と同時に、二人の関係性にも憧れを抱いていた。
俺達もそんな関係になれるのかな。なんて思いながら隣にいる麻琴をちらっと見るが、今までの自分達の関係を思い起こすと一筋縄ではいかないのは明らかで、小さく息を吐き出した。
それから数日後には卒業式が行われ、あちこちで別れを惜しむ声が飛び交っていた。
友達として固く抱き合う者、憧れの人の第二ボタンを欲しがる者、卒業を機に告白をする者。
このまま何もしなければ接点のないまま卒業をし、卒業後に会える機会などないに等しくなる。それならばと勇気を振り絞るものが現れるのは当然だろう。
「あの、ちょっと良いかな?」
胸に卒業生と分かるコサージュを付け、大きな花束を持った小柄な男子生徒が話しかけてきた。……おそらくオメガだろう。
「はい、何でしょう?」
他の人に声をかけたのかと思い軽く周りを見渡してみたが、自分以外に誰もいないと分かったので首を傾げながら返事をした。
「急に、ごめんね。ずっと君のことが気になっていて……このまま会えなくなるのが寂しくなって……」
たどたどしく口から出されていた言葉が、どんどん小さくなっていく。
ああ、これは卒業を機に告白というやつか。
「だから……その……連絡先の交換からお願い出来たら……」
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