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10. 突然の出来事 ①

 太陽(たいよう)は、佐久(さく)くん抜きで遊びに行くかーなんて言ってたけど、夏休みに入ってからしばらくは、佐久くんの特別授業の時間に合わせて集まることにした。  特別授業があるのは丸々一日じゃないから、授業前に近くのファストフード店で少し話をしたり、授業後に集まってランチに行ったり。  時にはおれ達も学校に集まって、そのまま佐久くんに勉強を教えてもらったりと、夏休み前半の平日は学校に来る日が多かったように思う。  そして今日は珍しく、一日集中して勉強をしようということになった。  たまには誰かの家でやるのも楽しいかもなんて意見が出たから、昼間両親が不在なおれの家でやることに決まった。  学校での勉強と違って、家でやると休憩を挟む時間が多かったり、言葉もつい多くなってしまうように思う。それでも皆各々ノートに向かって真面目にペンを走らせていた。  去年までは、勉強は蒼人(あおと)に教えてもらっていたなぁなんて思い出すと、なぜか少し寂しい気持ちになった。  最近は、今まで感じたことのない感情が湧き出てくることが増えて、心の中で首を傾げる。  でも、あまりにも一緒にいすぎたから、いないことに違和感を覚えてるだけだろうと自己解釈をして、止まっていた手の動きを再開した。  午後になって、太陽と飯田(いいだ)くんがそれぞれ家族からの連絡を受け取り、予定より早めに帰ることになった。  二人も帰るなら解散にしようかとおれが提案したら、ちょっと話があるからと言われ、太陽と飯田くんが帰った後も佐久くんだけ一人残ることになった。  太陽と飯田くんが、『丁度良いから二人で途中まで帰るよ』と言いながら家を出たのが、ほんの5分程前。  話ってなんだろうと思ったけど、佐久くんがいるうちに片付けをしてしまおうと言うので、先程食べたケーキのお皿やコップなどを片付ける。  そして綺麗に片付いたテーブルの両端に向かい合う形で座ると、佐久くんは正座で背筋をピンと正して、緊張した面持ちで口を開いた。 「回りくどいのは苦手だから単刀直入に言うけど。……俺と付き合ってくれないかな?」 ……??  佐久くんが何かを言ったみたいだけど、なんのことだろう?  あまりにも唐突過ぎて、いつもより多くの瞬きをしながら、ゆっくりと首を傾げた。

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