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12. 喫茶店で ②
「ちょっと温かい飲み物でももらおうか。……すみません、ホットレモンティーいただけますか?」
明らかに様子がおかしくなっていくおれを見かねて、佐久くんは店員さんへと声をかけた。
「温かい飲み物を飲んで落ち着こうか。……由比くんは森島くんからなにか聞いてる?」
返事の代わりに、小さく首を横に振る。
「きみ達、兄弟のようにいつも一緒だから、なにか聞いてるのかと思ったんだけど、言ってないんだね。やっぱり、内密だから外には漏らせない話なのかな。……兄弟同然なのに話をしてもらえないって、ショックだよね」
佐久くんはおれの気持ちを代弁するかのように、でも、聞きたいわけじゃないのに、次から次へと話を続けた。
「でも噂を聞く限り、政略結婚ってことだろ? 由比くんが心配すると思って言えなかったのかもしれないね。俺達から見たら、きみはとても大切にされているように見えたからね」
「じゃあ、なんでっ……大切にしてるなら、言ってくれなかったんだ! 隠されている方が、辛いのにっ……」
佐久くんの言葉に反抗するかのように一言声を出した途端、堰を切ったように言葉も涙も溢れ出てきた。
「おれ達、兄弟も同じだろ? 産まれたときから一緒だろ? ……なのに、何で隠すんだ? コソコソするんだ? なんで飯田くんなんだよ──」
なんでよりによって飯田くんなんだよ.......全く知らない人だったら、まだ諦められたのに──。
「っ……?」
自分の心の声に驚き、思わず声が漏れた。
諦められたのに……?
目を大きく見開いて、自分の胸に手を当てる。
え? どういうこと……?
「失礼します。ホットレモンティーになります」
戸惑いを隠せずにいると、横から声をかけられた。
頼んでいたレモンティーが運ばれて来たようだった。
「由比くん、とりあえずこれ飲んで落ち着こうか」
優しく声をかけられて、大きく深呼吸をしてから、コクンと頷いた。
ふーっふーっと冷ますように息を吹きかけると、少しずつ気持ちが落ち着いてくるような気がする。
ずずっと温かいレモンティーをすすると、喉からスーッと染み入りお腹まで温まっていく。
「美味しい……」
温かいレモンティーはほっと落ち着く。レモンの香りも鼻をくすぐり、気持ちを穏やかにしてくれる。
「うん、良かった。ゆっくり飲んでね」
目の前で、佐久くんがニコニコして見ている。
同じ歳のはずなのに、とても頼りがいがあって、年上なんじゃないかと錯覚してしまう。その上気が利くし優しいし、イケメンだし。
こんな人となら…………。
蒼人と飯田くんの事を頭から剥がすかのように、目の前の佐久くんの事を考える。
そうだよ、おれのこと気になるって言ってくれてるじゃないか……。
そんな事を薄っすらと考えていたら──。
ドクンッ──。
突然、心臓が跳ね上がった。
と同時に、身体中が燃えるように熱くなる。
えっ…………?
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