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19. 大好きな匂い ②
そして、自分がこんなに蒼人の匂いに安心出来るんだって驚いたのと、それだけずっと蒼人に守られてきたんだということに気付かされた。
半袖シャツとパジャマを握りしめたまま布団をかぶると、まるで蒼人に包まれているみたいだった。
今だけ、今だけだから……。
飯田 くんへ申し訳無さを感じながらも、今だけだからと許しを乞うように小さくつぶやいた。
蒼人の匂いは、どれだけ努力しても眠れなかったおれを、あっという間に夢の世界へと誘っていった。
次の日の朝。近くで聞こえる物音で目が覚めた。
被って寝た布団も、起きた時は腰まで掛けた状態になっていたけど、蒼人の衣類はそのままで、大事そうにぎゅっと抱え込んでいる。
蒼人の匂いを嗅ぎながら寝たら、心がほわほわして心地よかった。また今夜もお世話になろうかな……なんて考えながら顔を上げたら、驚いた表情の蒼人と目が合った。
「お……おはよ」
びっくりして、思わず手に持ったままの蒼人の服ごと、『やぁ』って感じで手を上げた。
そんなおれを見て蒼人は益々目を見開いたあと、はっと我に返ったように動き出した。
「おはよう。……具合はどうだ?」
ちょっとぎこちない動きと言葉でおれに話しかけてくるけど、どうしてもチラチラと手に持ったモノへと視線が動く。
そりゃそうだよな。オメガの習性と、手に持ったものを総合して考えたら、動きも止まると思う。
おれだってドキドキして視線が泳ぐ。
そんな中でなんて言い訳しようと考えていたけど、勝手に口が動き出した。
「ご、ごめん。……蒼人の服、ちょっと借りた……。先生がさ、体調落ち着けるには、アルファの、ふ……フェロモン嗅ぐのがいいって、言うから。ほら、一番身近で、すぐ頼めるっていったら……蒼人……じゃん? 紅音 さんがさ、先生に聞いたらしくて……蒼人のを、持って来てくれて……。昨日、全然眠れなくて……ちょっとだけ、匂いを……な……。……ほんと……ごめ……ん……」
必死な言い訳をする自分が、どんどん恥ずかしくなって、情けなくなって、蒼人にも、飯田くんにも、申し訳なくて。
段々語尾は小さくなり、最後の方はほとんど聞き取れないだろう声になっていた。
それなのに、蒼人から返ってきた言葉は、おれの想像していた言葉とは違った。
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