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21. 久しぶりの学校 ②
「麻琴 が食べたいのを聞いてる」
蒼人はそう言いながらおれの髪を手櫛で撫でると、何故かおれの腰を支える手にぐっと力を入れた。
さっきから、耳元で喋るから息がかかって、ソワソワする。
おれって、ずっとこんな状態を平気で過ごしてたのか!?
ヤバイ。自覚した後に、こんな事されたら落ち着かなくてしょうがない。気も漫ろになってしまう。
でもそこではたと気づく。飯田 くんが登校してきて、こんな場面を見てしまったらマズイんじゃないか?
おれは慌てて降りようとしたけれど、蒼人は離してくれない。
「あ……蒼人。授業はじまる前にさ、もう教室出たほうが良いんじゃないか?」
ここはオメガクラスだ。本来ならば、大人のいない状態でのアルファの立ち入りはあまり好ましくない。
それなのに、平然と居座る蒼人。クラスメイトはそれを疑問に思わないのか、普通に話しかけてくる始末。どういうことだよ。一年生の頃ならまだ分かるけど。
この状況がおかしいことを藻掻きながら訴えるけど、もっと腕に力を込められ、さらにはしっかりとおれを抱きしめるような形を取った。
そしてするりと頬擦りをすると「気にしなくて大丈夫」と囁いた。
いや、大丈夫じゃないし!それに、みんな見てるから!!
まるで恋人にするような甘い仕草に、おれの脳は勘違いを起こしそうだ。
頬に熱が集まるのを感じながら慌てて周りを見たら、もうとっくにクラスメイトは散り散りになっていて、すでにこちらへの興味は失っているようだった。各自それぞれ違う話題で盛り上がっていた。
「今日は、麻琴も早退するから」
「はっ!?」
「大丈夫。ご両親にも先生にも話してある」
「ちょっと、何勝手なことを言ってんだよ。そん……」
「いいから。大丈夫だから」
やっぱり、おれの話を聞く気はないらしい。今日の蒼人は、何かがおかしい。
今まで言葉は少なくても、おれの話はしっかりと聞いてくれた。
こんなに強引に話を進めるようなやつじゃなかった。
「……なぁ、どうしたんだよ?」
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