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21. 久しぶりの学校 ③
「また明日から戻らなきゃならないから、今日は付き合ってほしい……」
勝手なことするなって突き放したくても、そんな懇願されるような目をされたら、駄目だって言えないじゃないか。
蒼人はずっとおれに甘かったけど、おれだって蒼人に甘い自覚があるんだ。
飯田くんには申し訳ないけど、今日は蒼人との時間をもらおう。
あとどのくらい一緒にいられるかもわからないから、少しだけ素直になって、一時一時を大切にしよう。
「仕方がないなぁ……。今日だけだぞ」
おれの腰に回された蒼人の腕を、ぎゅっと包みこんだ。
結局、そのあとすぐ教室から連れ出された。
こんな時間に高校生がウロウロしていたら補導されてしまうかもしれない。そう危惧したのに、校門を出たところで、一台の車が迎えに来ていた。
「麻琴くん、その後体調はどう?」
車の中から手をヒラヒラさせながら声をかけてきたのは、紅音 さんだった。
「え? なんで紅音さんが?」
誰かが迎えに来てるなんて思わないし、しかもそれが蒼人の親だなんてもっと想像していなかった。
びっくりして目を丸くしているおれに、紅音さんはケラケラと笑いながら、後部座席を指した。
「話はあと。とにかく後ろにのって?」
良くわからないまま言われたとおりに後部座席へ乗ると、その後に続いて蒼人も乗り込んできた。
そしておれのシートベルトと自分のシートベルトをしっかりと締めると、おれの手をぎゅっと握った。
ええっ……と。おれはどうして良いのか困惑してしまう。
何やってんだよ! って離すことも出来たけど、今までのおれ達を知ってる紅音さんの前でそんなことしたら、明らかに不自然だよな。そう思って握られた手を振りほどくのはやめた。
ふっと手の力を抜いたのが蒼人に伝わったのか、こちらをちらっと見て、もう一度きゅっと手に力を入れる。
何故か嬉しそうに微笑む顔を見て『今日だけ、今日だけだから』と、呪文のように繰り返し、おれも蒼人の手をきゅっと握り返した。
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