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26. 告白 ①
「ありがとな。……おれは大丈夫だから、すべてを話して欲しい」
大好きな香りをめいいっぱい吸うと、震えていた声も落ち着き、平常心を取り戻せた気がする。
背中から離れるとくるりと蒼人 をこちらに向かせ、ちょっと意地悪そうにニカッと笑いながら、真正面から抱きついてやった。
そして。蒼人の胸に顔を埋めたまま、思いの丈をぶつけることにした。
「蒼人……好き……」
顔は見えないけど、きっと目を見開いて驚いているんじゃないかな。
このタイミングで? って思うけど、しょうがないんだ、今だって思っちゃったんだから。
学校で意識を失う直前、もう蒼人に会えないかもしれないって思った。
叶わない恋かもしれないけど、言えないまま会えなくなってしまったらって思うと、怖くなった。
それなら、思いだけでも伝えたい。
おれの、本当の気持ちを。
「──っ!」
抱きついたままのおれの頭上から、息を呑む声が聞こえた。
「……返事は、しなくていい。……伝えたかっただけだから」
なにか言いたげな蒼人を制して、何も言わないでほしいと懇願する。
蒼人への思いを浄化できた。それだけで満足だ。
「肩のこと詳しく聞きたいけど、もう面会時間終わるよな。……明日、来れる時間あるか?」
「……明日も、朝から来る。……さっきのは……」
「わかった! じゃあ、また明日な」
蒼人の言いかけた言葉に無理やり被せ、半ば強引に会話を終了させると、もう寝るから! と、部屋から追い出した。
ごめんな。言うだけ言って逃げるなんて卑怯かもしれないけど、今日はもういっぱいいっぱいなんだ。
さっき蒼人に抱きついたから、おれ自身にも匂いが付いているし、今日は蒼人に包まれる気分で寝られる。
思いもよらずな告白になってしまったけど、後悔はしていない。
たとえ親の決めた結婚だったとしても、蒼人なら相手をとても大切にするだろう。そして、ちゃんと好きになるだろう。
でも、心の一番奥かも知れないけど、おれの気持ちもきっと仕舞っておいてくれるはずだ。
いつか、笑ってこんな日もあったなって、話せる日が来るといいな。
肩の痛みと胸の痛みに少し顔を顰めつつも、自分に纏う大好きな人の匂いを感じながら、眠りについた。
次の日。蒼人は言った通り朝早くからやってきた。
本来は面会時間というものが存在するのだけど、春岡 先生の病院ということもあって、かなり融通がきくようになっていた。
産まれた頃からおれ達のことを知っている春岡先生だから、蒼人はおれにとって家族と同じ扱いということは承知していることだけど、真面目な蒼人は、律儀に先生へちゃんと面会の確認を取っていたらしい。
「体調はどうだ?」
蒼人の第一声はそれだった。
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