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番外編 友達の家で(月歌視点)②
「ただいまー」
月歌 が困っていると、玄関から帰宅を知らせる蒼人 の声がした。
「あ! 蒼人くん、おかえりなさい。麻琴 くんが酔って寝ちゃって……」
「月歌くん、いらっしゃい。予定より早く用事が済んだから連絡入れたんだけど、返事がないと思ったら、こういうことか」
蒼人はそう言いながら麻琴の側に行くと、「麻琴、こんなところで寝ていると風邪ひくぞ」と肩を揺する。それでも反応がないので、しかたがないなぁと優しい微笑みを麻琴に向けると、そのまま抱き上げた。
麻琴は抱き上げられたことに気付いて、蒼人の首にぎゅっとしがみついた。
「わーい、蒼人だ~。おかえり~? 会いたかった~」
もう月歌がいることなどすっかり忘れている様子で、ベタベタ甘え始める麻琴。
「月歌くんごめんね、ちょっと寝かせてくるから待っていて」
蒼人はそう言って、寝室に消えていった。
しばらくして戻ってくると、蒼人は客間を用意したからと案内してくれたけど、蒼人に甘えている麻琴を見たら、月歌も星司 に甘えたくなってしまった。
ピンポーン。タイミングよくチャイムが鳴る。月歌は愛おしい人の香りを感じ取り、足取り軽く玄関へ向かった。
「星司くん!」
月歌はここが友人の家だということもすっかり忘れて、星司に飛びつくと、大好きな香りを思い切り嗅いだ。
「麻琴くんが蒼人くんに甘えてるのを見て、僕も星司くんに会いたくなったんだ!」
客間を用意したと言った蒼人だけど、おそらく帰ってきてすぐ星司に連絡してくれたのだろう。
大喜びで星司に抱きつく月歌を見て、蒼人も満足そうに微笑んだ。
「月歌くん、せっかく来てくれたのにごめんな」
本当はそのまま麻琴の家に泊まらせて貰う予定だったのに、麻琴が酔って寝てしまったことを蒼人は申し訳無さそうに詫びていた。
「ううん。二人でお酒のんで楽しかったから。ありがとう! 旅行のリベンジしようねー!」
さっきまで気が張っていた月歌も、星司が迎えに来たことで気が緩んだのかもしれない。
上機嫌で「バイバーイ」と手を振ると、星司と二人で家に帰っていった。
次の日、頭が痛いと言いながら起きてきた麻琴に、酔って月歌に絡んだことを話した。
「うわー、全然覚えてない! おれ弱いのに、楽しくなっちゃってつい調子に乗っちゃったよー! せっかく来てくれたのに謝らなきゃー」
そう言って、すぐさま月歌に連絡を取って平謝りしていた。
でもすぐその後に楽しそうな笑い声と、これに懲りずにまた一緒に飲もうと約束をしていた。
オメガ二人が酔ってひたすらニコニコしている姿を想像し、たまにはそんな時間を作ってあげるのも良いなと思って、小さく微笑む蒼人だった。
(終)
✤
お酒に酔うオメガちゃん二人、可愛いだろうなと思って書いたお話。
でも麻琴が弱すぎて先にダウンしちゃいました(汗)
今度は月歌もポヤポヤしているところを書きたいなー。
麻琴はこんなところでも、料理がからっきし駄目エピソード披露されてしまった(笑)
これは、Xに上げたものを手直しして載せています。
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