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⚠パロディ⚠ 麻琴と月歌が小さくなった話
⚠️これはパロディです。ご注意ください。⚠️
✤
「みんな、おはよー!」
いつものように蒼人 と二人で登校し、教室まで送り届けられたおれは、クラスメイトにあいさつをしながら教室に入った。アルファだけは特別教室なので、一緒に授業をうけることは出来ない。蒼人は名残惜しそうに何度も振り返ると、自分の教室に向かって歩いていった。
入れ替わるようにやって来たのはベータの友達の太陽 だ。
「相変わらず過保護だな」
廊下ですれ違ったときに、麻琴 を頼むと今日も言われたらしい。ほんと過保護すぎるんだよな。おれは苦笑しながら太陽と椅子を向かい合わせにして座ると、昨日見たテレビの話で盛り上がっていた。
そんな時、廊下が突然騒がしくなった。なにしたんだろう? って思った途端、目の前がぐらりと揺れ、急に視界が変わった。あれ? どういうことだ?
「麻琴!?」
状況が飲み込めなくて困っていると、頭上から慌てたような太陽の声がした。なんで上から声がするんだ? と見上げたら、大きくなった太陽がおれを覗き込んでいた。
「んあ? なんでそんなに大きくなっちゃったんだ?」
「何言ってんだよ! 麻琴が小さくなったんだよ!」
「……は!?」
太陽はそう言うと、おれに手を伸ばしてきた。……けど、横から伸びてきた手に阻止され、それはその手にそっと抱えられ持ち上げられた。
「蒼人!」
もちろん、おれを抱き上げたのは蒼人だった。そしてその横にいるのはアルファの友達の星司 くん。その星司くんの手の中に、白い猫耳を生やしたオメガの友達の月歌 くんの姿があった。……ということは、もしかしておれも?
「麻琴くん! なんで僕たち、耳と尻尾が生えてるの!?」
困ったように問いかけてくる月歌くんの言葉で、自分が今どんな姿になっているのかが想像できた。
「おそらく、オメガだけがかかるという、ウイルス性の感染症にかかっているのだと思う」
「感染症?」
「一時的なものだから、慌てることはない。風邪みたいなものだよ」
「そっか、よかったぁ」
冷静に分析をしてくれるのは、星司くんだ。月歌くんを大切そうに手のひらに乗せている。月歌くんの可愛い猫獣人の姿を見ていたら、おれも自分の姿が見たくて、蒼人の手の中からうったえた。
蒼人は分かったと小さく頷くと、荷物をまとめ帰り支度を始めた。いや、帰りたいって言ったわけじゃなくて……。
でも、アルファ同士で顔をあわせ頷きあうと、おれたちを連れて教室を出た。
「他の子に移したら困るから、今日は早退しよう」
教室から出ると、蒼人はおれたちに言った。念のため、今日は学校を早退して病院に行ったほうが良いって。学校が終わってからでも良いと思うのに、アルファ二人はさっさと早退手続きを済ませた。
蒼人はおれをコートのポケットに入れようとしたけど、おれはあっ! と思いついて、蒼人の肩によじ登り、コートのフードの中にポンっと降り立った。
「麻琴。そんなところじゃ危ない」
「大丈夫大丈夫! 結構居心地いいぞ!」
呑気なおれの言葉にちょっと困ったようだったけど「体を乗り出さないようにな」と言って歩き出した。おれだって落ちたくないから、ちょっとだけ顔を出して外を眺めた。いつもと同じ景色なのに、なんだか違って見えた。
おれたちはそのままオメガ専門医のいる病院に行った。なぜか太陽まで付いてきたんだけど? って思ったら、アルファは診察室に入れないんだって。太陽、世話かけてごめんな。
診察を終えたあと、星司くんは月歌くんの家まで送ると言って帰っていった。太陽はまた学校に戻るらしい。「帰る前に、写真撮らせてくれよ」という太陽を軽く睨んだ蒼人は、おれをそっとフードにいれるとスタスタと歩きだした。
さっきは危ないって言ったくせに。おれはくすりと笑った。
「太陽、付き添いありがとなー」
フードから顔を出して手を振ったら、蒼人がぼそっと「おれのだ」って言ったような気がした。ん? おれたちは兄弟みたいに仲の良い幼馴染だよな? どういう意味だろう? おれはフードの中で首を傾げた。
家に帰ると、前もって電話連絡をしておいたから大きな混乱はなかったけど、猫獣人な上に手のひらサイズになったおれを見て、うちの家族も蒼人の家族もみんな顔を緩ませ「かわいい」「さわらせて」「抱っこして良い?」など口々に言ってきた。
「麻琴は今日はつかれてると思うので、部屋で休ませていいですか」
なぜかちょっと不機嫌そうな声で言う蒼人に、まわりはみんな「あらあら」って言いながらクスクスと笑った。んー、よくわかんないや。
その後おれの部屋に入ると、蒼人はコートを脱ぎ、フードからおれを持ち上げるとベッドの上に下ろした。
「んー! びっくりしたけど、こんな経験滅多に出来ないし、なんか楽しくなっちゃったな!」
おれは鏡の前に立つと、ぴょんぴょんと飛び跳ねた。でも小さくて鏡まで届かない。それを見ていた蒼人が抱き上げおれを映してくれた。
「なぁ、おれ、めっちゃ可愛くないか?」
「うん、かわいい」
「この耳と尻尾、動くんだぜ」
「最高に可愛い」
耳と尻尾をピクピク動かしながら蒼人に言うと、蒼人は嬉しそうにおれをなで可愛いと連呼した。他のやつには触らせなかったくせにお前はいいのかよって突っ込みたかったけど、なでられるのが気持ちよくて、いつの間にか喉をゴロゴロ鳴らしながら眠ってしまった。
鼻をくすぐるいい匂いで目が覚めると目の前には暖かな壁。いや、壁なんかじゃない、体? おれはびっくりして顔を上げたら、そこには嬉しそうに微笑む蒼人の顔があった。
「あ、蒼人!? え? なんで?」
起き上がりたくても、蒼人にホールドされていて動けない。……ってことは。あれ? もしかしてもとに戻ってる? 子猫サイズじゃ潰されちゃうだろ。
「ちょ、離せよ!」
「いやだ」
「いやだじゃねーよ! おれ、もとに戻ってるのか!?」
「麻琴が寝ちゃったから、ベッドに寝かせたんだ。俺はソファーで寝てたんだけど、気付いたら麻琴はもとに戻ってて」
「じゃあなんでお前がここで寝てるんだよ?」
「俺を呼んで一緒に寝ようって言うから……」
蒼人の言葉に俺は唖然とした。そんなこと言った覚えはない。ただ、夢の中で子猫のおれをなでていた蒼人が離れているのが寂しくて、添い寝を頼んだような気が……。でもあれは夢の中の出来事じゃないのか?
「もういい、離せ! おれは起きる!」
抱きしめられる形で寝ていたことに、今更ながら顔が一気に熱くなる。兄弟のように仲の良い幼馴染なら、このくらい普通じゃないか。そう思うはずなのに、おれの心臓はバクバクと大きな音を立てる。どうしちゃったんだよ、おれの心臓!
結局その後、蒼人が懇願するから断れきれず、あと30分だけ……とそのままでいたら、おれも一緒に再び夢の中に吸い込まれていった。
そしてまた、とても幸せな夢を見た気がする──。
(終)
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