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あれで付き合ってないの? ~ 幼馴染以上恋人未満 ~ 03 向き合う | 一ノ瀬麻紀の小説 - BL小説・漫画投稿サイトfujossy[フジョッシー]
目次
あれで付き合ってないの? ...
03 向き合う
作者:
一ノ瀬麻紀
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03 向き合う
麻琴
(
まこと
)
と
蒼人
(
あおと
)
に相談した日から、オレの中で何かが変わった気がした。 本音を言うと、実習初日に突撃された時は、驚きと戸惑いしかなかった。 言い方は悪いが、新しくて大きな大学病院ではなく、わざわざ古い個人院に来る意味もわからなかった。 その上、オレへのあの態度。いくら平和主義のオレでも、警戒するなって言う方が無理だった。 でもこの1ヶ月一緒に過ごして、
凛太郎
(
りんたろう
)
がどういう人物なのか……ほんの少しだけ、わかった気がする。 蒼人の言うように、冗談であんなことを言う奴には思えないし、今冷静になって思い返せば、あの時の凛太郎は本当に嬉しそうだった。 だから、麻琴と蒼人の言うように、オレはちゃんと凛太郎と向き合おうと思った。 オレは、戸惑いの中で、無意識にその話題から避けていたんだと思う。 今思えば、凛太郎が何か言おうとしたことが何度かあった。それなのにオレは、聞こえないふりをしたり、意図的に話題を変えたりしたんだ。 何が、『実習初日以来、凛太郎は何もアクションを起こしてこない』だ。 オレは、自分が事実を捻じ曲げていたことに気づき、凛太郎に申し訳ない気持ちでいっぱいになった。 ◇ あの日、麻琴と蒼人に相談してから、一週間が経とうとしていた。 あれから変わったことといえば、凛太郎と……自分自身と向き合うと決めたオレの視線が、自然と凛太郎を追いかけているということ。 戸惑いから、無意識に気づかないふりをしていたのに、今度は無意識に目で追っているなんて、笑っちゃうよな。 でも、そんな気持ちを知らない凛太郎は、とても嬉しそうだった。 「
太陽
(
たいよう
)
さん、最近よく目が合いますね! 僕、すっごく嬉しいです」 「そうか? 気のせいだろ」 「えー、そんなことないですよー」 昼休憩中に、オレと凛太郎は近くのファミレスに来ていた。 今日は比較的落ち着いていて、午前最後の患者さんが会計を済ませたのは、12:00を少しだけ過ぎた頃だった。 「それ言うなら、まぁ、凛太郎は頑張ってるなって、思って見てるかもしれないな」 「本当ですか? 僕、頑張ってるって思ってくれるんですか?」 「みんな、そう思ってると思うぞ? 学生ながらも、春岡先生の指示を的確に読み取り、臨機応変に対応できてるし、患者さんにも、ご近所さんにさえも評判がいいんだぞ?」 オレが褒めたのがそんなに嬉しいのか、凛太郎はわかりやすく目を輝かせた。 いつも思うんだけど、凛太郎はまるで大型犬のようだ。ないはずの耳がピーンと伸び、しっぽはぶんぶんと大きく揺れている幻覚さえ見えてくるようだ。 「太陽さんが褒めてくれるなんて、僕感激です。もっともっと頑張ります!」 「頑張るのは良いことだけど、大学の課題とかもあるんだろ? 無理するなよ」 「はい! 大丈夫です。アルファは頑丈にできてるんで!」 確かに、一般的にアルファは何事にも秀でているし、強いと言われている。 顔面偏差値も高いし、知能も運動能力も高いし、力だって強いし、免疫力が高いから、健康面でも最強だって言われてる。 だから、アルファがこの世界を統率しているんだ。 でも、バース専門病院の看護師をしているオレが言うのも変な話だけど、アルファだからとかベータだからとか考えるのはあまり好きではない。けどこういう時は、ちょっとアルファが羨ましいなって思ってしまう。 「それはそうと、さっき言ってた話なんだけど」 どう転んでもベータのオレが、無い物ねだりをしてもしょうがないから、早々に話題を変えた。 「キッズスペースの話ですね!」 「アルファ専用の待合室にも、キッズスペースを……なんて、良い提案をするじゃないか」 最近は、アルファが育児に積極的に参加するようになってきて、アルファ専用の待合室に子どもを連れてくる場面も出てきた。 今日の午前中、子連れのアルファが来院したんだけど、その子どもが退屈そうにしていたのを見て、凛太郎が声をかけたんだ。 手には絵本を持っていて、父親であるアルファ男性に許可をもらい、その子に絵本を読み始めた。 そんな出来事があったからなのか、凛太郎がオレに言ってきたんだ。『アルファ専用の待合室にも、キッズスペースがあると良いんじゃないでしょうか』って。 実は、以前にもそういう話は出ていたのだけど、『育児はオメガがするもの』みたいな風習はまだ根強く残っていて、結局はその話はうやむやになっていたんだ。 だから世の中の考えが変わってきている今、アルファである凛太郎が声を上げるのは、すごく意味のあることなんだと思う。 「安心して、患者さんにクリニックに来ていただけたらいいなって思ったんです。キッズスペースがあれば、他の人の目も届きやすいと思いますし」 「そうだな、凛太郎の考えはとても良いと思う。ただ残念なことに、いまだに育児はオメガがするものという意見は多い。だから、アルファの凛太郎が積極的に発信していくのは、意味のあることだと思うよ」 オレの言葉に、凛太郎は少し顔を曇らせ、視線を下に落とした。少しの間の後、ゆっくりと顔を上げると、言葉を繋げた。 「僕、アルファだからって思われるの、ずっと嫌だったんです。……でも、アルファの僕が伝えることに意味があるのなら、アルファという性を利用していくのもいいのかなって思いました」 ベータのオレにはわからないし、想像でしかないかもしれないけど「アルファだから」「アルファなら」っていう世間の目に晒されて生きてきたんだろうな。 それならせめて、ベータのオレの前では、バースに囚われずに肩の力を抜いて欲しい。 「じゃあ、戻ったら春岡先生にも相談してみるか」 「はい!」 さっきまでの曇った顔ではなく、キラキラと輝く笑顔で、凛太郎は元気よく返事をした。
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一ノ瀬麻紀
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