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葵が風邪で寝込んでいる。
原因は先日、双子が同時に風邪を引いていつも以上に付きっきりで看病し、その際に伝染 ったからだ。
子どもの風邪は伝染ると厄介だと聞いたが、葵の症状を見る限りそれが顕著に現れ、しかしてこれほどまでとは。
別室で寝かせている葵のことは大いに気になるが、それよりも。
普段いる部屋で寝巻きのまま大好きな母親の姿がなく、大泣きしている二人のことを見据える。
今は目の前のことをどうにかしなくては。
「おとーさま⋯⋯。おかーさまは⋯⋯?」
「お母さまは風邪で寝込んでいるんだよ」
「あえないの⋯⋯?」
「そうだね。ちゃんと治ってないとまた新達が風邪を引いてしまうよ」
「あーが、かぜになっちゃたから⋯⋯」
「まーも⋯⋯ごめんなさい」
ぐすぐすと鼻を啜りながら二人は自分達が悪いのだという顔をしていた。
この様子に葵は、自分のことのように心を痛めるのだろう。
妊娠中、存在そのものを嫌がられて、隙あらば自らの手で下そうとしていた相手のことをこんなにも好きになるとは。
二人のことをやっかんでいた葵が真を出産した時、真がすぐに産声を上げなかったことが変わるきっかけだったのだろう。自分のせいで産声を上げなかったと酷く動揺していたし、その後も慣れない子育てにとても悩んで、それでもどうにか頑張っていた。
それにだって、一日中片時も離れず、たくさん愛情を注いでくれるのだ。嫌う理由なんてないのだろう。
しかし。それでも葵が産まれてから今日まで、もっというとこれから先も一番に好きなのは自分なのだが。
「二人が悪いわけじゃない。風邪引くのは、今よりももっと元気になるためなんだから」
「そーなの⋯⋯?」
「そうだよ」
「ほんとうに⋯⋯?」
「本当」
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