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「ねぇ⋯⋯碧人さん。僕、いけない呼び方をしたよ⋯⋯?」 「うん、そうだね」 「罰、は⋯⋯」 「今じゃなくてもできることだよ。それよりも葵にとって最優先すべきことがあるでしょう」 「⋯⋯」 納得がいかないというように頬を膨らませていた。 普段ならすぐにお仕置きしてくれるのに、今自分がこのような状態だからしないことに不満を持っているようだった。 罰を与えたいが、できない。今すぐにでも緩くだらしない後孔に欲を捻り込みたいところだが、今は自重だ。 宥めるように頭を撫でていると、膨らませていた頬を戻した。 顔は不貞腐れたままだったが。 「⋯⋯治ったら、お仕置きして」 「けど、それよりも葵は、元気になるようにとたくさん作ってくれた可愛い可愛い子ども達に会いたいのでしょ? お仕置きされている暇なんてないんじゃないんかな」 「⋯⋯いじわる」 寄せていた眉をさらに深く刻む。 そんなにもお仕置きされたいというのか。 そこまで仕立てあげたのは自分ではあるが、これではお仕置きというより、ただ甘えておねだりしているように思えてならなかった。 「さ、葵。いつまでも喋っていて疲れたでしょう。今はただ治すことだけを考えて、寝てね」 少しの間の後、ゆっくりと頷いた。 小さく笑った。 「そうだ。さっき二人にも歌ってあげたけど、眠れるように子守歌歌ってあげようか」 「⋯⋯聞かせて」 小さく笑みを見せる葵の頭を曲調に合わせてゆっくりと撫でながら歌ってあげた。 そうしていると微睡んでいた葵の目が閉じて、寝息が歌声に混じりに聞こえた時、止めた。 静かに眠る愛しい相手が笑った顔のままであることに気づいた時、つられて笑った。 自分のために笑っているのなら、この上なく嬉しいこと。 「⋯⋯いい子であったら、ご褒美をあげようか」 そんな冗談のようなことを呟いて、碧人はそれから飽きずに撫で続けるのであった。

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