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just memories 5
四方を山に囲まれたこの学校では他よりも足早に夏は過ぎて、一気に秋を連れてくる。
鬱陶しいほどに主張していた緑は消え失せて、赤や黄色に色づいた木の葉が次の季節を前に最後の色どりを見せていた。
あの日、都築と悠斗に暗幕が覆いかぶさって転倒した日、二人は保健室でいったん手当を受け、その後都築は頭を打ったかもしれないということで総合病院へ、悠斗は頭は打っていなかったが足を捻っていたので近くの整形外科を受診することとなった。
打ったところが頭だということで、駆け付けた教師に早く行った方が良いと追い立てられるように学校を後にしたので、あの後二人がどうしていて、何を話したのかは都築には分らない。
けれど、あの日から明らかに関わり方を変えた二人に、都築の心は常にざわざわと胸騒ぎを起こしていた。
もう少し時間が合ったら。
もっと早く出会っていたら。
同級生だったら。
悠斗さんはおれを好きになってくれてた?
おれのこと、選んでくれてた?
悔しいけど、何度考えても答えはNOだ。
あの時のおれは、どうか二人が思いを告げられないまま時が過ぎていくのを願うしかなかったんだよ。
まだ季節も一周していないのに、おれから奪っていかないで。
ああ、思い返したら、我ながら自分を抱きしめてあげたいよ。
学校で二人を見かけるたびに、昨日よりも変わったことはないかって、彼らを注意深く観察する毎日。
健気すぎるな。
だけどそんな綱渡りみたいな毎日はじきに終わる。
そしたら今度は、苦しい片思いが長く長く続いていくんだ。
心がつぶされて痛くて痛くてしょうがないのに、声を出して叫べない、そんなことがお前を襲うよ。
何度も。
何度も。
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